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2021/01/30

ステージIIIのNSCLCに対する適応放射線治療は安全に実施可能も局所-領域制御の有意な改善は得られず【WCLC 2020】

中西美荷=医学ライター

 ステージIIIの非小細胞肺癌(NSCLC)に対する化学放射線療法において、FDG-PET/CT所見に基づいて線量を決定する適合放射線治療(Biologic imaging guided Adaptive Radiotherapy:BigART)は、肺および心毒性を増加させることなく安全に実施可能だった。しかし標準的な照射法と比較して局所-領域制御の有意な改善はもたらさなかった。

 多施設共同ランダム化フェーズ2試験RTOG1106/ACRIN-6697で示されたもので、1月28日から31日までWEB上で開催されている世界肺癌学会(WCLC 2020)で、Hong Kong University Shenzhen Hospital/Queen Mary HospitalのFeng-Ming (Spring) Kong氏が報告した。

 適合放射線治療(ART)は、変化していく腫瘍や患者体型に治療計画を適応させることにより、腫瘍への線量を上げるとともに、正常組織への線量を抑えて正常組織障害確率(NTCP)を低減することを目的としている。

 Kong氏らの仮説は、ステージIIIのNSCLCに対する化学放射線療法(CRT)において、個々の患者の正常組織の耐容線量に合わせて、FDG-PET/CTで同定された抵抗性で悪性度の高い腫瘍に高線量を照射するBigARTにより、局所-領域における腫瘍制御が向上するというものである。

 単群のフェーズ2試験UMCC 2007123では良好な局所制御と生存率が示されており(Kong FM et al., JAMA Oncol. 2017; 3(10): 1358-1365)、本試験はこれをランダム化試験で検証すべく行われた。

 主要評価項目は米国放射線学会画像ネットワーク(ACRIN)の放射線医による盲検評価(中央判定)での2年局所-領域無増悪(LRPF)率である。

 2012年2月22日から2017年3月8日に127例を登録し、組織型(扁平/非扁平)、肉眼的腫瘍体積(GTV:200cc)、平均肺線量(MLD:14Gy)で層別化した上で、標準RT群(43例)、ART群(84例)に1:2で割り付けた。

 同時化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル週1回)中の線量は、標準RT群は50Gyを25分割(50Gy/25fr)、ART群は50Gyを17-21分割とし、両群ともに40-50Gyを照射した時点でFDG-PET/CTを実施した。その後、標準RT群はFDG-PET/CT 所見にかかわらず60Gy/30frを照射した。ART群における線量は2.4-3.5Gy/frを10回から開始し、FDG-PET/CT所見に基づき総線量が66-100Gy/30fr、MLDが20Gyとなるよう個別化した。全例がCRT後にカルボプラチン+パクリタキセル3週毎投与3回の地固め療法を受けた。

 危険臓器(OARs)に対する線量制約は、肺がMLD 20Gy、心臓はV40Gy EQD2(等価線量[EQD2]で40Gy以上の照射を受ける体積の割合)<100%、V65Gy EQD2<34%、脊髄<50Gy EQD2、食道は平均34Gy以下、最大80Gy以下とした。

 標準RT群、ART群の年齢、性別、人種、PS、腫瘍径、組織型およびステージなどの患者背景はバランスが取れていた。標準RT群の1例とART群5例でRTが実施されず、ART群2例ではARTが実施されなかった。追跡期間は3.6年以上。

 中央判定でのLRPF生存期間中央値は標準RT群 27.5カ月(95%信頼区間:14.3カ月-未達)、ART群28.4カ月(95%信頼区間:19.1カ月-未達)で有意差を認めなかった(p=0.6585、Z検定)。2年LRPF率は標準RT群59.5% (95%信頼区間:37.9-75.7)、ART群54.6%(95%信頼区間:39.9-67.0)。

 主治医判定のLRPFも両群に有意差はなかった。なお今回、局所-領域全体と照射野内については事前規定していないが、主治医判定による照射野内LRPF率はART群で良好で、2年LRPF率の差は11%だった(それぞれの数値は提示なし)。

 標準RT群、ART群におけるグレード3以上の放射線誘発の肺毒性はそれぞれ5.3%、6.9%、食道が7.9%、3.8%、心毒性は2.6%、1.3%だった。グレード2以上の食道障害はART群でやや高頻度(31.0% vs. 42.5%)だったが、その他の胸部におけるグレード2以上の毒性に差はなかった。

 ART群の計画総線量中央値は80.0Gy、実投与線量は71.0Gy(範囲3.96-85.5、Q1-Q3 67.8-76.1)、MLDは計画20.0Gyに対して実際は17.9Gyだった。標準群の総線量中央値は60Gy(範囲8-60、Q1-Q3 60-60)、MLD中央値は16.1Gy。Kong氏は「BigARTにより、PETで同定された抵抗性の腫瘍への線量中央値を11Gy、肺線量中央値を1.8Gy上げることができた」とした。

 本試験はBigARTにより20Gy線量を上げることで20%の改善が得られる(標準RT群50%、ART群70%)と想定し、検出力85%として138例を登録する計画だった。今回、2年LRPF率に有意差はなかったが、Kong氏は「ART群で実投与線量が11Gy高く、2年LRPF率の差が11%だったことは仮説と同様」と述べた。

 またRTOG 0617試験ではDNA修復経路の遺伝子型により放射線感受性が異なり、線量を上げてもそのベネフィットを受けない患者が2/3存在したこと(Kong FM et al., ASTRO 2020)に触れ、今後、ステージIIIのNSCLCにおける線量の効果についてさらに研究し、最適化する必要があるとした。また線量の最適化に加えて、やはりOS改善につながると考えられる正常組織への線量を低減する上でもBigARTは有用だとした。

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