ステージII-IIIの非小細胞肺癌に対し、高線量で原発巣全体に均一に照射する方法とFDG-PET高集積部位にさらに高い線量を照射する方法は、いずれも局所・領域再発を抑制できる可能性が、フェーズ2試験であるPET-Boost試験で示された。オランダThe Netherlands Cancer Institute-Antoni van LeeuwenhoekのSaskia Anne Cooke氏らが、1月28日から31日までWEB上で開催されている世界肺癌学会(WCLC 2020)で発表した。
ステージIII非小細胞肺癌に対する化学放射線治療には60Gyの照射が行われている。切除不能ステージIII非小細胞肺癌を対象としたPACIFIC試験での放射線治療は54-66Gyで、MLD(平均総肺線量)<20Gyおよび/またはV20(20 Gy以上が照射される肺体積の全肺体積に対する割合)<35%が照射されていた。
PET-Boost試験は、局所制御を改善するため線量の増加が検討された。ステージII-IIIの非小細胞肺癌で、原発巣腫瘍径が4cm以上、FDG-PETの集積度SUV最大値(SUVmax)が5.0以上、WHO PS 0-2の患者を対象に行われた。原発巣全体に均一に照射する群(原発巣均一照射群)と、原発巣内のFDG集積の高い部位(>50%SUVmax)に高い線量を照射する群(FDG高集積照射群)に無作為に割付した。
原発巣均一照射群では原発巣全体に3.3Gyを24回、リンパ節に2.75Gyを24回、MLDに16.3Gyの照射を、FDG高集積照射群では原発巣全体に2.75Gyを24回、その中でFDG-PETの集積が高い部位には3.9Gyを24回、リンパ節に2.75Gyを24回、MLDに16.2Gyの照射を計画した。2つの照射法で毒性は同等とした。
主要評価項目はCT所見の中央評価による1年時点での無局所再発(local failure)とし、副次評価項目には全生存期間、計画標的体積(PTV)外での局所再発・領域再発が含まれた。胸部CTで3、6、12、18カ月に中央評価した。局所再発は、原発巣の20%以上の増大と定義された。局所無再発率が70%から85%に改善することを目標に試験はデザインされた。
2010年4月から2017年9月に、欧州7施設から150人が登録し、107人が無作為化割付された。なおこのフェーズ2試験では2群は比較されないデザインであったことから、p値は報告されていない。
患者背景は、原発巣均一照射群で男性が69%、FDG高集積照射群で58%を占め、年齢中央値は66歳と69歳、ステージIIが9%と15%で、ステージIIIAが56%と62%、ステージIIIBが35%と23%、同時化学放射線治療を受けた患者は76%と68%であった。非扁平上皮癌が65%と55%だった。
治療計画では、原発巣における肉眼的腫瘍体積(GTV)は、原発巣均一照射群で中央値が100cm3、FDG高集積照射群は115cm3で、FDG高集積部位のGTVは29cm3となった。1回線量は原発巣均一照射群で3.3Gy、FDG高集積照射群は3.5Gyで、計画された総線量は78Gyと84Gyであった。心臓への平均照射は8Gyと11Gyとなった。
これまでの報告で、1年時点の局所無再発率は、原発巣均一照射群で97%、FDG高集積照射群で91%、1年生存率は77%と62%、3年生存率は37%と33%だった(ESTRO 2020)。
今回は局所再発および領域再発の結果が報告された。観察期間中央値は12.6カ月だった。2年局所再発率は、原発巣均一照射群が11%、FDG高集積照射群が18%で、2年領域再発率は28%と25%であった。
原発巣均一照射群で、胸部の再発は18人に認められた。局所再発が3人、照射野内領域再発が8人、照射野外領域再発が6人、新規の肺病変が8人であった。局所・領域再発の2人は新規の肺病変も認められた。FDG高集積照射群で、胸部の再発は19人に認められた。局所再発が4人、照射野内領域再発が4人、照射野外領域再発が6人、新規の肺病変が7人であった。
以上の結果から、腫瘍の大きいステージII-III非小細胞肺癌に対し、高線量の原発巣全体への照射およびFDG高集積部位への照射は、どちらも優れた局所制御を示すとした。