ソラフェニブ治療歴のある進行肝細胞癌に対し、抗PD-1抗体ペムブロリズマブはプラセボに比べて、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を改善することが、無作為化フェーズ3試験であるKEYNOTE-240のアップデート結果で確認された。フランスHopital de la Croix-RousseのPhilippe Merle氏らが、1月15日から17日にWEB上で開催された2021 Gastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI 2021)で発表した。
KEYNOTE-240試験では、ソラフェニブによる治療を受けた肝細胞癌患者において、ペムブロリズマブはプラセボに比べてOSやPFSの改善を示したが、事前に設定された統計学的有意水準は満たしていなかった。OSの最終解析で、OS中央値はペムブロリズマブ群13.9カ月、プラセボ群10.6カ月で、ハザード比は0.781(95%信頼区間:0.611-0.998)であった(J Clin Oncol. 2020;38(3):193-202)。PFSは最初の中間解析で、PFS中央値がペムブロリズマブ群3.0カ月、プラセボ群2.8 カ月で、ハザード比0.775(95%信頼区間:0.609-0.987) だった。奏効率はペムブロリズマブ群16.9%、完全奏効(CR)は3人で、プラセボ群の奏効率は2.2%、部分奏効(PR)のみだった。
今回は、最終解析から18カ月を追加し、無作為化からデータカットオフ(2020年7月13日)までの観察期間中央値40カ月の長期データが報告された。
試験の適格基準は、肝細胞癌で、測定可能病変を有し、ソラフェニブ治療後に進行またはソラフェニブに不耐容、Child-Pugh分類A、BCLC分類ステージCまたは局所療法が適さないか局所療法が無効のステージBで、根治的治療の対象とならない患者、ECOG PS 0か1の患者であった。
ペムブロリズマブ200mgを3週おきに静注し、かつ支持療法(BSC)を行う群と、プラセボを投与しBSCを行う群に2:1で無作為に割り付けた。治療は35サイクル、または進行や許容できない毒性、患者の同意撤回、医師による中止決定まで継続された。層別化因子は地域(日本以外のアジア、日本を含む非アジア)、肉眼的脈管侵襲(あり、なし)、α-フェトプロテイン(AFP)レベル(200ng/mL未満、200ng/mL以上)であった。
主要評価項目はOSとRECISTv1.1に基づき盲検独立中央審査(BICR)により評価されたPFSだった。副次評価項目は、BICRで評価した奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)、病勢制御率(DCR)、および安全性だった。
413人が無作為化され、ペムブロリズマブ群は278人、プラセボ群は135人だった。
長期のフォローアップでも、OSのハザード比は維持されていた。OS中央値は、ペムブロリズマブ群が13.9カ月(95%信頼区間:11.6-16.0)、プラセボ群が10.6カ月(95%信頼区間:8.3-13.5)、ハザード比0.77(95%信頼区間:0.62-0.96)、p=0.0112となった。24カ月OS割合はペムブロリズマブ群28.8%、プラセボ群は20.4%、36カ月OS割合は17.7%と11.7%であった。
PFS中央値は、ペムブロリズマブ群で3.3カ月(95%信頼区間:2.8-4.1)、プラセボ群は2.8カ月(95%信頼区間:1.6-3.0)で、ハザード比0.70(95%信頼区間:0.56-0.89)、p=0.0011だった。24カ月PFS割合はペムブロリズマブ群11.8%、プラセボ群4.8%、36カ月PFS割合は9.0%と0%であった。
OSおよびPFSのサブグループ解析では、全体としていずれのサブグループでもペムブロリズマブ群が優れていた。
奏効率は、ペムブロリズマブ群18.3%、プラセボ群4.4%だった。DCRは、ペムブロリズマブ群61.9%、プラセボ群53.3%であった。ペムブロリズマブ群では、CRが10人、PRが41人、SDが121人、PDが85人だった。プラセボ群ではCRが0人、PRが6人、SDが66人、PDが54人であった。
奏効までの期間中央値は、ペムブロリズマブ群2.7カ月(95%信頼区間:1.2-16.9)、プラセボ群で2.9カ月(95%信頼区間:1.1-6.9)であった。DOR中央値は、ペムブロリズマブ群で13.9カ月(95%信頼区間:1.5-41.9+)、プラセボ群15.2カ月(95%信頼区間:2.8-21.9)で、12カ月以上のDORの割合はペムブロリズマブ群で53.7%、プラセボ群で50.0%だった。
新規の有害事象(AE)や予期せぬ AE は発生しなかった。グレード3/4の治療関連AEはペムブロリズマブ群19.0%、プラセボ群7.5%だった。治療関連AEによる治療中止は6.8%と0.7%だった。スポンサーが評価した免疫介在性肝炎は、ペムブロリズマブ群3.6%、プラセボ群0%で、長期の観察でも増加はなかった。また2群ともウイルス性肝炎の再燃はなかった。
以上の結果から、ソラフェニブ治療歴のある進行肝細胞癌患者において、ペムブロリズマブによるOSおよびPFSの改善は長期データでも維持されていたとした。また安全性プロファイルも変わらなかったとした。