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2020/09/24

既治療のEGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCに抗HER3抗体薬物複合体patritumab deruxtecanが有望【ESMO2020】

森下紀代美=医学ライター

 濃厚な前治療を受けたEGFR遺伝子変異陽性の局所進行または転移を有する非小細胞肺癌(NSCLC)に対し、HER3を標的とする抗体薬物複合体(ADC)patritumab deruxtecanU3-1402)は、5.6mg/kgの用量で臨床的に意義のある抗腫瘍効果と管理可能な安全性が得られることが、フェーズ1試験から示された。9月19日から21日まで開催されたESMO VIRTUAL CONGRESS 2020(ESMO2020)で、米Memorial Slaon Kettring Cancer CenterのHelena A. Yu氏が発表した。

 EGFR遺伝子変異陽性のNSCLCで、EGFR TKIと白金系抗癌剤を含む化学療法が無効となった患者の治療選択肢はきわめて限られている。

 Yu氏らは、このような患者を対象として、patritumab deruxtecanの安全性と抗腫瘍効果を評価したフェーズ1試験から、用量漸増パートと用量拡大パートを合わせた最新結果を報告した。

 用量漸増パートでは、EGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCで、オシメルチニブで増悪した患者、またはエルロチニブ、ゲフィチニブ、アファチニブで増悪後にT790M変異陰性の患者を対象に、patritumab deruxtecanを3.2mg/kgから6.4mg/kgの範囲で投与した。

 用量漸増パートから、フェーズ2試験の推奨量はpatritumab deruxtecan 5.6mg/kgとなった。用量拡大パートの対象は、EGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCで、EGFR TKIの投与を受け、かつ白金系抗癌剤を含む化学療法を1レジメン以上受けた患者だった。HER3の発現は、試験治療開始前(EGFR TKIで増悪後)の腫瘍組織で解析した。主要評価項目は盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率、副次的評価項目は安全性と忍容性だった。

 データカットオフ日の2020年4月30日までに、用量漸増パートの12人と用量拡大パートの45人の計57人に、patritumab deruxtecan 5.6mg/kgを3週毎に投与した。奏効の評価は56人で可能だった。6人は腫瘍の評価を1回のみ受けた。 

 patritumab deruxtecanによる治療期間の中央値は3.5カ月(範囲:1-14)で、データはまだmatureではない。追跡期間中央値は5カ月(範囲:0-15)だった。

 57人の年齢中央値は65歳、女性が63%、アジア人が47%、白人が44%だった。転移に対する前治療のレジメン数は中央値で4(範囲:1-9)、全例がEGFR-TKIの投与を受けており、49人(86%)がオシメルチニブの投与を受けていた。51人(90%)は白金系抗癌剤を含む化学療法、23人(40%)は抗PD-1/PD-L1抗体の投与を受けていた。27人(47%)が中枢神経系転移を有していた。

 データカットオフの時点で、28人(49%)が試験治療を継続していた。HER3の発現の評価が可能だったのは43人で、Hスコアの中央値は180(範囲:2-280)だった。

 追跡期間中央値は5カ月と短いが、patritumab deruxtecan 5.6mg/kgによる有効性は、EGFR C797S遺伝子変異、MET増幅、HER2遺伝子変異、BRAF遺伝子の融合、PIK3CA遺伝子変異など、さまざまなEGFR TKI抵抗性のメカニズムで認められた。

 奏効の評価が可能だった56人において、完全奏効(CR)は1人(2%)、部分奏効(PR)は13人(23%)で得られ、奏効率は25%(95%信頼区間:14.4-38.4)となった。この他に、3人で未確定のPRが示された。病勢コントロール率(DCR)は70%(95%信頼区間:55.9-81.2)、奏効までの期間の中央値は2.0カ月(範囲:1.2-2.8)、奏効期間中央値は6.9カ月(範囲:3.0-7.0)となった。

 グレード3以上の試験治療下で発現した有害事象(TEAE)では、血小板減少症が最も多い16人(28%)に発現し、次が好中球減少症の11人(19%)だった。血小板減少症や好中球減少症による治療中止はなかった。TEAEによる治療中止は5人(9%)で、内訳は疲労感2人、食欲低下1人、間質性肺疾患(ILD)1人、肺臓炎1人、上気道感染症(URTI)1人だった。またILDは3人(5.3%)に発症し、治療に関連すると判定された。治療に関連するTEAEによる死亡はなかった。

 Yu氏は「これらのデータは、分子標的治療の対象とならない患者集団を対象とする、HER3を直接標的とするADCの今後の臨床研究を裏付けるもの」と話した。

 現在、EGFR TKIと白金系抗癌剤を含む化学療法が無効となった患者を対象に、patritumab deruxtecan単剤を評価するフェーズ2試験が計画されており、20201年早期の開始が予定されている。

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