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2020/09/01

腫瘍浸潤エフェクターT 細胞と制御性T細胞上のPD-1発現バランスがICIの高精度な効果予測因子の可能性

横山勇生=編集委員

 国立がん研究センター、名古屋大学、日本医療研究開発機構は、腫瘍浸潤エフェクターT細胞(CD8陽性T細胞)と制御性T細胞上のPD-1発現バランスが、免疫チェックポイント阻害薬(ICI、PD-1/PD-L1阻害薬)の治療効果を高精度に予測するバイオマーカーである可能性を見いだした。

 免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、ペンブロリズマブもしくはアテゾリズマブ)による治療を受けた悪性黒色腫、肺癌、胃癌患者の治療前の組織標本を用いて、腫瘍浸潤リンパ球に関する詳細な免疫学的解析を行った結果示された。さらに検証コホートで、同定されたバイオマーカーが有効であることも確認した。免疫チェックポイント阻害薬が有効な患者の同定や、併用により有効となる患者の同定などにつながる可能性がある。詳細はNature Immunology電子版に2020年8月31日に掲載された。

 実施された研究は、国立がん研究センター研究所腫瘍免疫研究分野・先端医療開発センター免疫TR分野分野長の西川博嘉氏(名古屋大学大学院医学系研究科微生物・免疫学講座分子細胞免疫学教授併任)と、同研究所細胞情報学分野分野長の間野博行氏、同東病院副院長の土井俊彦氏、名古屋大学大学院医学系研究科臨床医薬学講座生物統計学教授の松井茂之氏と、日立製作所らの研究チームで行ったもの。またバイオマーカー同定は小野薬品工業との共同研究として実施し、同定したバイオマーカーの測定方法は日本べクトン・ディッキンソンと共同開発した。

 PD-1/PD-L1阻害薬が効果を発揮するには、腫瘍微小環境中に癌抗原を認識して活性化するPD-1陽性エフェクターT細胞が必要なことが示唆されている。しかし、実臨床で PD-1陽性エフェクターT細胞の量を測定するのに必要な大きさの腫瘍組織を採取することは困難で、腫瘍浸潤リンパ球を効果予測バイオマーカーとして検討することは難しかった。

 研究グループは、治療開始2週間前以内に腫瘍組織生検検体を採取し、解析に必要な腫瘍浸潤リンパ球を効率的に調製、フローサイトメトリーで腫瘍浸潤リンパ球の免疫学的な特徴を評価できる方法を日本ベクトンディッキンソンと開発した。

 そして2016年から 2019年までに国立がん研究センター中央病院、東病院で進行固形癌と診断されPD-1/PD-L1 阻害薬の投与を受けた悪性黒色腫(12例)、肺癌(27例)、胃癌(48例)患者を、探索コホート(39例)と検証コホート(48例)の 2コホートに設定し、開発したフローサイトメトリーを用いて腫瘍浸潤リンパ球を免疫学的に解析する方法で調べた。その結果、探索コホートで、治療奏効例で腫瘍浸潤エフェクターT細胞上のPD-1発現が有意に高く、腫瘍浸潤エフェクターT細胞上のPD-1発現が高い群では低い群と比較して無増悪生存期間が有意に長いことを見いだした。

 一方、腫瘍浸潤エフェクターT細胞上のPD-1発現が高いにもかかわらずPD-1/PD-L1阻害薬治療が奏効しなかった一部の症例があった。研究グループは、以前に抗腫瘍免疫応答を抑制する制御性T細胞が腫瘍環境下でPD-1を高発現していることがPD-1阻害薬治療後の急激な増悪に関わることを報告していたことから、腫瘍浸潤制御性T細胞上の PD-1発現とPD-1/PD-L1阻害薬の治療効果の関係を調べた。その結果、治療不応例で腫瘍浸潤制御性T細胞上のPD-1発現が有意に高く、腫瘍浸潤制御性T細胞上のPD-1発現が高い群では低い群と比較して無増悪生存期間は有意に短かった。

 これらの結果を受けて研究グループは、他の免疫細胞や分子の治療効果との相関も検討することを目的とし、114 項目のパラメーターについてAIを用いたディープラーニングを実施し、治療効果の判定に関連する重要因子を探索した。その結果、腫瘍浸潤エフェクターT細胞に発現する PD-1の陽性率と制御性T細胞に発現する PD-1の陽性率の比率が、最も治療効果を予測するバイオマーカーとして同定された。

 そして腫瘍浸潤エフェクターT細胞上に PD-1が 40%以上発現し、しかも腫瘍浸潤制御性T細胞よりエフェクターT 細胞で優位にPD-1が発現するグループをGroup Rと定義し、治療が有効なグループとした。探索コホートのGroup Rでは無増悪生存期間は有意に長い結果となり、さらに検証コホートでも確認され、非常に有用なバイオマーカーである可能性が示された。

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