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2019/4/3

TGF-βとPD-L1を標的とする新たな免疫療法薬M7824がHPV関連癌に有望、奏効率は30%超に【AACR2019】

森下紀代美=医学ライター

 難治性のヒトパピローマウイルスHPV)関連癌の患者に対し、TGF-βPD-L1を標的とする二重特異性の融合蛋白質M7824は、毒性プロファイルは抗PD-L1抗体と類似し、管理可能で、有効性も有望であることが、国際的な非盲検のフェーズ1試験から示された。奏効率は、HPV関連癌で34.9%、HPV陽性が確認された癌では38.9%となった。3月29日から4月3日まで米国アトランタで開催されているAmerican Association for Cancer Research(AACR2019)で、米国立衛生研究所(NIH)のJulius Strauss氏が発表した。

 TGF-βシグナル伝達経路の調節異常は、肛門癌、子宮頸癌、p16陽性の頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)などのHPV関連癌において、発癌や免疫回避に重要な役割を持つとみられ、この経路は標的となると考えられる。また、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)などのHPV関連癌では、PD-L1が高発現していることも報告されている。

 M7824は、PD-L1に対するヒトIgG1モノクローナル抗体と、TGF-βRII受容体の細胞外領域に位置するTGF-β結合体(TGF-βトラップ)を融合し、PD-L1とTGF-βの2つの経路に同時に作用するようデザインされている。フェーズ1試験では、SCCHNや子宮頸癌などの複数の固形癌において、良好な忍容性と持続的な奏効が示されている。

 今回、Strauss氏らは、このフェーズ1試験から、用量漸増コホートと拡大コホートの安全性と有効性のデータを統合した事後解析を行い、その結果を報告した。

 M7824は2週毎に投与し、用量漸増フェーズでは0.3-30mg/kgの用量で、拡大フェーズでは1200mgの用量とした。投与は増悪(PD)、受容不能な毒性の発現、同意の撤回まで継続し、臨床的に正当であればPD後の投与も可とした。主要評価項目は、用量漸増フェーズでは安全性、拡大フェーズではRECIST v1.1による最良総合効果(BOR)とした。

 データカットオフの2019年1月9日の時点で、HPV関連癌で治療歴がある43人がM7824の投与を受け、このうち36人はHPV陽性であることが確認された。同試験の適格基準には、転移を有するか局所進行の固形腫瘍であること、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体による治療歴がないことなどが含まれたが、PD-L1、HPVの状態は問わなかった。

 全対象43人のうち、女性は29人、年齢中央値は56歳、疾患の内訳は肛門癌4人、子宮頸癌25人、SCCHN14人だった。6割以上の患者が2ライン以上の治療を受けていた。HPV陽性が確認されたのは、肛門癌とSCCHNの全例、子宮頸癌では18人だった。

 毒性プロファイルは、抗PD-1抗体に類似していた。7人(16.3%)が治療関連有害事象(TRAE)のため、治療を中止した。免疫関連有害事象は、治療の延期やコルチコステロイドの投与などで管理可能だった。グレード4の有害事象は、胃不全麻痺による低カリウム血症の1人(2.3%)のみで、グレード3からの移行だった。治療関連死は発生しなかった。

 9人(20.9%)に扁平上皮癌または角化性棘細胞腫が発生し、これは他のTGF-β阻害薬でも示されている。病変は管理可能で、治療中止にはつながらなかった。またグレード1/2の粘膜出血(鼻出血と歯肉出血)が3人で報告された。
 
 グレード3のTRAEとして報告されたのは、扁平上皮癌や角化性棘細胞腫などの皮膚の病変(7.0%)、発疹(2.3%)、貧血(2.3%)、肺臓炎(2.3%)、胃不全麻痺(2.3%)、大腸炎(2.3%)、低カリウム血症(2.3%)などだった。

 試験担当医の評価による奏効は、全対象43人では、完全奏効(CR)が2人、部分奏効(PR)が10人で得られ、奏効率は27.9%だった。HPV陽性が確認された36人では、CRは2人、PRは9人、奏効率は30.6%となった。CRの2人はいずれも子宮頸癌の患者だった。PRは、SSCCHNが4人、子宮頸癌が4人、肛門癌が2人だった。

 さらに、最初のPDの後に3人でPRが得られ、この3人を加えた奏効率は、全対象で34.9%、HPV陽性が確認された患者で38.9%となった。

 奏効期間は持続的で、中央値には未到達であり、最初に奏効が得られた12人中9人(75%)、PD後に奏効が得られた患者も加えた15人中11人(73%)では、データカットオフ日も奏効が持続していた。また、奏効はPD-L1の発現に関わらず認められることも示された。

 予備的な解析では、OS中央値は全対象で16.2カ月、HPV陽性が確認された患者では未到達となった。6カ月時のOS率は、全対象で73.7%、HPV陽性が確認された患者で77.0%、12カ月時のOS率はそれぞれ56.2%、61.8%だった。

 Strauss氏は「TGF-βとPD-L1を標的とするM7824は、HPV関連癌の患者に有望な治療薬であり、現在フェーズ2でさらに評価を進めている」とした。

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