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2019/1/20

進行膵癌の予後因子は分子サブタイプとGATA6、GATA6低発現ではmFOLFIRINOXの効果が低い可能性【ASCO GI2019】

八倉巻尚子=医学ライター

 進行膵管腺癌(PDAC)で、RNAシークエンスによるサブタイプ分類とGATA6遺伝子発現は予後因子であり、GATA6低発現ではmFOLFIRINOXの効果が低い可能性が、前向きトランスレーショナル研究であるCOMPASS試験で明らかになった。カナダPrincess Margaret Cancer CentreのJennifer J. Knox氏らが、1月17日から19日まで米国サンフランシスコで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)2019 Gastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI2019)で発表した。

 進行膵癌の治療にはmodified(m) FOLFIRINOX (5-FU、ロイコボリン、イリノテカン、オキサリプラチン)とゲムシタビン+nab-パクリタキセルが標準的に使われているが、治療を選択するためのバイオマーカーは明らかでない。そこでCOMPASS試験では、局所進行もしくは転移を有するPDACで、併用化学療法による1次治療を行うことのできる患者を対象に、治療選択のためのバイオマーカーを探すことを目的に、全ゲノムシークエンス(WGS)とRNAシークエンスが行われた。

 COMPASS試験の主要評価項目は、8週時点のCT画像評価までにWGSの結果報告を得ることとしていた。新鮮凍結標本を用いてレーザーキャプチャーマイクロダイセクション法で腫瘍を集め、90%以上でWGSの結果が得られ、ゲノム解析までの期間中央値は35日だった(Aung KL, et al. Clin Cancer Res. 2018 Mar 15;24(6):1344-1354)。このため主要評価項目は到達した。

 膵癌の分子サブタイプはいくつか報告されているが、トランスクリプトーム解析によるMoffittらの分類では、RNAシグネチャーでclassicalタイプとbasal-likeタイプの2つに分けられ、basal-likeタイプは予後不良と関連することが報告されている(Moffitt R, et al. Nature Genetics 2015; 47:1168-1178)。今回は、Moffitt分類および膵癌の悪性化に関与するGATA6遺伝子の発現と生存との関連性が検討された。

 患者は化学療法による1次治療の前に、2016年1月から2018年9月までに180人が登録された。生検検体が得られた169人のうち、ゲノム解析の結果が得られたのは154人、RNA結果が得られたのは145人だった。解析対象は150人(ITT患者集団)、うちRNAデータは141人だった。

 ITT患者集団の年齢中央値は64歳(29-81歳)、男性が57%、アジア人23%、白人68%、そのほか/不明9%、局所進行膵癌が13%だった。1次治療としてmFOLFIRINOX治療を受けたのは47%、ゲムシタビン+nab-パクリタキセルは43%で、9%は投薬がなかった。

 この結果、mFOLFIRINOXによる治療を受けた患者(64人)において、classicalタイプで持続的な効果が見られ、basal-likeタイプのほとんどの患者は初回画像評価でPDになっていた。classicalタイプのPFS中央値は7.17カ月、basal-likeタイプは2.50カ月、ハザード比0.17(95%信頼区間:0.08-0.34)、p<0.0001だった。一方、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル治療(57人)では、classicalタイプのPFS中央値は5.65カ月、basal-likeタイプは4.93カ月、ハザード比1.17(95%信頼区間:0.51-2.67)、p=0.69だった。

 GATA6遺伝子の発現 (RNA) はMoffittサブタイプと関連し、classicalタイプはGATA6遺伝子の高発現と関連していた(p<0.0001)。またin situ ハイブリダイゼーション(ISH)法でのGATA6発現スコアはRNAシークエンスの結果と関連した(p<0.0001)。

 全生存期間(OS)中央値は、Moffitt分類のclassicalタイプ(111人)は8.8カ月、basal-likeタイプ(30人)は5.2カ月、ハザード比0.53(95%信頼区間:0.34-0.84)、p=0.006であった。またRNA ISH法によるGATA6高発現患者のOS中央値は8.2カ月、低発現患者では5.8カ月、ハザード比0.66(95%信頼区間:0.40-1.07)、p=0.08であった。mFOLFIRINOXによる治療を受けた患者(67人)では、classicalタイプのOS中央値は10.1カ月、basal-likeタイプは5.3カ月、ハザード比0.33(95%信頼区間:0.17-0.63)、p=0.0005だった。

 多変量解析で、Moffitt分類(classicalタイプとbasal-likeタイプ)、化学療法の有無が生存に関連する有意な因子であった。

 また、患者のおよそ4割は治療薬を使うことのできるアクショナブル遺伝子異常を有していた。KRAS野生型の患者グループ(12人、8%)では、MAPK-BRAFインフレーム欠失(3人)やBRAF V600E変異(1人)、FGFR1遺伝子増幅(1人)、NTRK3-EML4融合遺伝子(1人)が認められた。これらの患者では2次治療としてBRAF阻害薬+MEK阻害薬による治療が行われ(1人)、FGFR阻害薬による治療が計画されている(1人)。

 BRCA遺伝子変異の患者グループ(9人、6%)では、生殖系列(g)BRCA遺伝子変異(7人)、体細胞BRACA-2遺伝子変異(1人)、体細胞RAD51C遺伝子変異(1人)が見られた。生殖系列BRCA遺伝子変異の2人では、WGSで相同組み換え修復不全(HRD)シグネチャーは見られなかった。この患者グループではプラチナ系製剤に変更(3人)、PARP阻害薬(2人)、新規HRD薬(1人)による治療が行われた。

 そのほかKRAS遺伝子変異と別の遺伝子変異を有していた患者グループ(38人、25%)では、活性型変異(PIK3CA、ERBB3、ERBB4)、不活性型変異(STK11、PTEN)、増幅遺伝子(HER2、CDK4/6、FGF3、FGF4、FGF19、MYC、新規ABL融合遺伝子)が見られた。これらの患者ではパルボシクリブ(2人)、FAK阻害薬/MEK阻害薬(3人)、イマチニブ(1人)、PLK4阻害薬(1人)による治療が行われた。

 これらの結果から、進行PDAC患者でWGSとRNAシークエンスは可能であり、アクショナブルな遺伝子異常が検出されたとした。またMoffitt分類とGATA6発現は2つの予後グループに分けることができ、GATA6低発現のbasal-likeタイプはmFOLFIRINOXに抵抗性を示す可能性があるとした。

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