進行肝細胞癌患者にソラフェニブ後の2次治療としてラムシルマブを投与した2件のフェーズ3試験の日本人データをプール解析した結果、AFP値が400ng/mL以上の患者での全生存期間(OS)について臨床的に意味のある改善効果が認められることが明らかとなった。改善効果は、それぞれのフェーズ3試験全体で認められた効果と同等だった。1月17日から19日まで米サンフランシスコで開催されているGastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI2019)で、近畿大学の工藤正俊氏によって発表された。
1次治療としてソラフェニブを投与した後の2次治療として、ラムシルマブ投与群とプラセボ投与群を比較した国際フェーズ3試験であるREACH-2試験とREACH試験において、前もって規定されたAFP値400ng/mL以上の患者グループでラムシルマブのOS改善効果が認められていた。どちらの試験も14日おきにラムシルマブ8mg/kgかプラセボが投与された。
工藤氏らは、REACH試験とREACH-2試験のAFP値が400ng/mL以上の患者グループに参加した日本人データをプールして有効性と安全性について解析した。
両試験合わせて日本人は101人が参加しており、ラムシルマブ群に割り付けられたのが61人、プラセボ群に割り付けられたのは40人だった。プール解析の結果、日本人患者のOS中央値はラムシルマブ群が10.78カ月、プラセボ群が4.47カ月で、ハザード比0.555(95%信頼区間:0.348-0.885)、p=0.0124で有意にラムシルマブ群でOSが改善していた。全患者を対象としたプール解析の結果が既に報告されており、OS中央値はラムシルマブ群が8.1カ月、プラセボ群が5.0カ月で、ハザード比0.694、p=0.0002だったことから、日本人患者で全体と同等の有効性が認められた。サブグループ解析では、ソラフェニブ投与で増悪して中止となった患者のグループを含むいくつかのサブグループでラムシルマブによるOSの改善効果が認められた。
日本人患者の無増悪生存期間(PFS)中央値は、ラムシルマブ群が3.88カ月、プラセボ群が1.41カ月で、ハザード比0.341(95%信頼区間:0.212-0.550)、p<0.0001で有意にラムシルマブ群でPFSが改善していた。奏効率はラムシルマブ群が9.8%(95%信頼区間:2.4-17.3)、プラセボ群が2.5%(95%信頼区間:0-7.3)、疾患制御率はラムシルマブ群が67.2%(95%信頼区間:55.4-79.0)、プラセボ群が35.0%(95%信頼区間:20.2-49.8)で、どちらもラムシルマブ群で高かった。腫瘍径の縮小が認められた患者もラムシルマブ群で多かった。
日本人患者のラムシルマブ群で治療中に多く認められた全グレードの副作用は、腹水と末梢浮腫だった。プラセボ群に比べてラムシルマブ群で増加していた特に関心のある副作用は肝障害/肝不全と出血イベントで、主に低グレードの腹水と鼻出血によるものだった。グレード3以上の高血圧(ラムシルマブ群13%、プラセボ群5%)、グレード3以上の肝性脳症(ラムシルマブ群5%、プラセボ群0%)がラムシルマブ群で多く認められた。