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2018/12/9

I-II期の乳癌患者の心肺機能の低下予防に術後療法中の12カ月間の運動プログラムの実施が有効な可能性【SABCS2018】

森下紀代美=医学ライター

 I-II期の乳癌では、術後の標準治療に加え、個々の患者の心肺機能に基づいて作成した12カ月間の運動プログラムを実施することにより、心肺機能の低下の予防に有効と考えられることが、多施設共同のランダム化比較試験EBBA-II(NBCG-14)から示された。12月4日から8日まで米・サンアントニオで開催されたSan Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS2018)で、ノルウェーOslo University HospitalのInger Thune氏が発表した。

 乳癌の生存率は改善したが、多くのサバイバーが心血管機能の低下を経験する。治療誘発性の心毒性は大きな懸念であり、心血管疾患は乳癌のサバイバーの死因の1つとなっている。

 運動について、乳癌の術後療法中に検討した研究や、初回治療後の有用性を検討した研究はほとんどない。Thune氏らは、女性や乳癌患者などを含む地域住民ベースのコホート研究EBBA-lifeで、運動が生存期間に寄与する可能性を見出している。

 EBBA-II試験の目的は、術後療法中に持久力と筋力のトレーニングで構成される12カ月間の運動プログラムを行うことにより、心肺機能に影響するかを判断すること、運動プログラムの有効性と安全性を評価すること、運動の種類、量、強度、期間を判断することだった。パイロット試験を2011年6月に開始した後、2014年9月に開始されたこの試験では、12カ月の運動プログラムを対象全員が終了し、試験終了となったのは発表の数日前だった。

 12カ月間の運動プログラムは、術後3週目から開始し、各患者の手術前の心肺機能に基づき、詳細なトレーニングプログラムが個別に作成された。患者は10-12人のグループで、週2回、60分間行うトレーニングに参加し、中等度から高度の強度のストレッチとウエイト・トレーニングを行い、さらに自宅でも120分以上の運動を行うこととされた(1週間当たり計240分の運動)。これらの運動は理学療法士が指導し、12カ月間継続した。対照には標準治療のみを行ったが、制限は設けなかった。

 試験の対象は、18-75歳、I-II期の乳癌で手術を受ける女性で、既知の重篤な疾患(心不全やコントロール不能な糖尿病など)や癌の既往がなく、運動への参加が可能であることとした。最大酸素摂取量(VO2max)は、手術前、術後6カ月時、12カ月時に、トレッドミルで負荷をかけて測定した。術後3週目に、運動プログラムを標準治療に加える群(運動群)、または標準治療のみを行う群(対照群)に、患者をランダムに割り付けた。主要評価項目は、ベースラインから術後12カ月時までのVO2maxの変化だった。

 589人が登録され、このうち545人のランダム化割り付けを行い、運動群271人、対照群274人となり、両群ともに診断時の平均年齢は約55歳、平均BMIは25.6、浸潤性乳癌の割合は約72%だった。術前の平均VO2maxは運動群31.0mL/kg/分、対照群31.7mL/kg/分だった。乳房温存療法(BCT)は運動群の68.9%、対照群の74.4%、腋窩リンパ節郭清はそれぞれ12.8%、11.9%に行われた。化学療法は、介入群の55.1%、対照群の54.8%、タキサンの投与はそれぞれ39.3%、39.6%が受けた。

 運動群では、化学療法を受けた患者も含め、12カ月間の運動プログラムの遵守率は70%となった。術前のVO2maxは年齢が上がるほど低下した(10歳で8-10%の低下)。運動に関する有害事象として報告されたのは疲労感で、1人に肩の障害が発生した。

 全対象(545人)では、術後6カ月の時点のVO2maxは、術前と比べて、対照群では8.9%と大きく低下し、術後12カ月の時点でも術前のレベルには回復しなかった。運動群では術後6カ月の時点の低下は軽度で、術後12カ月の時点では術前よりも0.3%改善した(p<0.001)。

 化学療法を受けなかった患者(242人)では、術後12カ月の時点のVO2maxは、術前と比べて、対照群では2.7%低下し、運動群では1.6%改善した(p<0.001)。

 化学療法を受けた患者(295人)では、術後6カ月の時点のVO2maxは、術前と比べて両群ともに低下し、特に対照群では14.3%と大きく低下した。術後12カ月の時点のVO2maxは、術前と比べて、運動群では0.8%の低下、対照群では6.4%の低下だった(p<0.001)。

 タキサンの投与を受けた患者(212人)ではより大きな低下がみられ、術後6カ月の時点のVO2maxは、術前と比べて、対照群では17.5%低下した。術後12カ月の時点のVO2maxは、運動群では1.4%の低下、対照群では7.3%の低下だった。

 Thune氏は「今回の知見は、管理された安全で臨床的な運動プログラムを乳癌の治療ガイドラインに組み込むことを支持するもの」とし、今後の方向性として、化学療法を受ける乳癌患者は、治療前に評価した身体機能のレベルに基づいて作成された運動プログラムの提供を受けるべきとした。

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