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2018/7/23

日本人の癌患者にも経済毒性がある可能性、米国開発のツールで評価【JSMO2018】

横山勇生=編集委員

 米国で使用されている癌患者の経済毒性(Financial Toxicity)を評価するツールを用いて、単施設で日本人患者を解析したところ、高額療養費制度で支払い上限がある日本人においても、癌の治療中に経済毒性を経験している患者が少なくないことが明らかとなった。7月19日から21日まで神戸市で開催された日本臨床腫瘍学会(JSMO2018)で、愛知県がんセンター中央病院の本多和典氏によって発表された。

 癌患者の経済毒性とは、ライフスタルに影響を与えるような癌治療に関連する経済的な負担のこと。米国においては生存期間やQOLに悪い影響を与えることが報告され、健康保険システムが幅広くカバーしているイタリアでも、経済毒性と生存期間が短くなることとの関連が示されている。

 本多氏らが用いたツールは、米国で癌患者の経済毒性を定量化するために開発されたCOST(COmprehensive Score for Financial Toxicity)ツール(de Souza et al, Cancer 2014, Cancer 2017)。11個の患者に対する質問項目から構成されており、各質問の回答は0、1、2、3、4のスコア付けされ、合計で0から44のスコアで回答者の経済毒性を評価する(表)。スコアが低いほど経済毒性が強く現れることになっている。

 本多氏らは、COSTツールが日本人癌患者でも利用できるかを検証することと、日本人の患者で経済毒性がどれくらいあるか、日本人癌患者の経済毒性に影響を与える因子を調べることを目的として調査研究を行った。愛知県がんセンター中央病院で、少なくとも2カ月、化学療法を受けた患者を対象にした。質問票にはCOSTツールの質問、自己負担医療費、家族の総収入、家族の貯蓄や他の社会経済的な背景に関する項目が入れられていた。また、電子カルテから疾患の状態に関する情報(原発部位、局所/転移、化学療法の期間、化学療法のレジメン)を得た。191人に質問への回答を打診し、156人(82%)から回答を得ることができた。

 回答した156人の背景は、年齢中央値が67歳(30-87)。男性が83人(53%)、既婚者が122人(78%)、大腸癌が77人(49%)、胃癌が39人(25%)、食道癌が16人(10%)などだった。最初の化学療法からの時間の中央値は12カ月(2-138)だった。

 患者が月々支払っている医療費の中央値は4万4400円(3750-37万5000)。年間の収入は200万円未満が10%、200万円以上400万円未満が33%、400万円以上600万円未満が29%、600万円以上800万円未満が11%などだった。貯蓄は、200万円未満が16%、200万円以上400万円未満が13%、400万円以上600万円未満が13%、600万円以上800万円未満が4%、800万円以上1000万円未満が8%、1000万円以上1500万円未満が10%、1500万円以上が32%、未回答が4%だった。

 雇用状況は、フルタイム雇用者が20%、パート雇用者が10%、休職中が8%、癌が理由で退職が19%、癌が理由ではなく退職が35%などだった。

 癌の治療費を捻出するために行っていることとして、食料費や衣服費の削減をあげたのが28%(米国の同様な調査では46%)、レジャー、外食などの削減をあげたのが44%(同68%)、貯蓄を切り崩したのが63%(46%)だった。

 COSTスコアの結果は、中央値が21(0-41)、平均が21.1で、米国で実施された2件の研究結果と同様の分布を示しており、日本人でもCOSTツールが使えるとした。スコアが26以上をグレード0、14から25をグレード1、1から13をグレード2、0をグレード3としたところ、グレード0は32%、グレード1が50%、グレード2が17%、グレード3が1%だった。日本においても68%の患者で経済毒性があることが分かった。

 多変量解析でCOSTスコアに影響を与える因子を調べた。有意な因子として、年齢、医療費捻出のために何らかの対処を行ったこと、貯蓄額、雇用の状況が抽出された。年齢が高い人は経済毒性が弱い傾向、医療費捻出のために何らかの対処を行った患者で経済毒性が強い傾向、貯蓄額が多い人では経済毒性が弱い傾向、パート雇用の人、癌で退職した人で経済毒性が強い傾向が認められた。

 本多氏は、日本人で認められたCOSTスコアに関連する因子が、米国で同定された因子とは異なっていることを説明し、日本では健康保険によって薬剤医療費が軽減されていることなどが影響している可能性を指摘した。


COSTツールの質問項目(本多氏らが和訳)
・治療にかかるお金を支払うのも十分な貯蓄、年金や資産を持っていると思う
・治療にかかるお金は予想していたよりも多い
・病期や治療による、将来の経済的な問題を心配している
・治療などにかかる金額に仕方がないと思う
・以前のように会社や家庭で働けないことにがっかりしている
・現在の経済状態に納得している
・毎月の出費に対処することができる
・経済的に苦しいと感じている
・自分の仕事や収入、あるいは家庭での役割が維持できるか、気にかかる
・病気や治療のせいで、自分の経済状態に対する満足度が減った
・自分の経済状態をコントロールできていると思う

いずれの項目も、スコアは「全く思わない」が0、「少し思う」が1、「そう思う」が2、「かなりそう思う」が3、「とてもそう思う」が4

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