両側の乳房切除術と片側の乳房切除術を受け、乳房再建術を受けた乳癌患者1万8000人以上を対象に米国で行われた術後30日間の合併症の調査の結果、両側の乳房切除術でも片側の乳房切除術でも合併症は一般的にまれなことが示された。
全体としての合併症発生率は5.3%で、両側の乳房切除術を受けた患者で5.2%、片側の乳房切除術を受けた患者で5.4%だった。ただし、両側の乳房切除術を受けた患者の方が、片側の乳房切除術を受けた患者に比べて、インプラントの失敗率、輸血が必要になる率が高く、入院期間もより長かった。9月4日から6日まで米サンフランシスコで開催されているBreast Cancer Symposium(ASCO Breast2014)で、米University of Chicago Pritzker School of MedicineのAmanda Silva氏によって発表された。
米国においては、予防的対側乳房切除術(CPM)の率は過去10年で5倍に増加しているという。大多数の女性にとって、CPMが生存を改善するとする証拠はない。しかし、BRCA遺伝子変異のような遺伝的な体質で片側の乳房に乳癌が発生した患者や乳癌の強い家族歴のある患者では、CPMが生存を改善する可能性が示唆されている。
研究グループは、American College of Surgeons National Surgery Quality Improvement Program(NSQIP)データベースから、両側の乳房切除術または片側の乳房切除術を受けた乳癌患者1万8229人のデータを同定した。患者の多く(64.3%)は、片側の乳房切除術を受けており、自己の他の組織を用いて乳房再建した患者よりも、インプラントを用いた乳房再建を行った患者が多かった(両側の乳房切除術を受けた患者の88.6%、片側の乳房切除術を受けた患者の79.4%)。データを基に術後30日以内に発現した合併症について、解析が行われた。
解析の結果、インプラントを用いた再建を受けた患者では、両側の乳房切除術を受けた患者の方が片側の乳房切除術を受けた患者よりもインプラント失敗率が高く(1%対0.7%)、最初の30日で2回目の手術を受ける見込みが高かった(7.6%対6.8%)。また再建の方法に関わらず、両側の乳房切除術は出血関連合併症のため輸血がより多く行われ、特に自己組織再建を行った患者で多かった。片側の乳房切除術を受けた患者で輸血が必要になった率は3.4%だったのに対し、両側の乳房切除術を受けた患者では7.9%だった。インプラントベースの再建を行った患者では輸血の頻度は少なかった。片側の乳房切除術を受けた患者で0.3%、両側の乳房切除術を受けた患者で0.8%だった。さらに両側の乳房切除術を受けた患者では、片側の乳房切除術を受けた患者よりも入院期間は長かった(インプラントベースの患者で1日対2日、自己組織ベースの患者で4日対5日)。肺炎や心臓の障害は少なく、どちらのグループでも同様な結果だった。