予後不良の甲状腺未分化癌を対象とした世界初の医師主導型前向き臨床試験で、患者登録が終了し、現在までにパクリタキセル毎週投与により、重篤な有害事象は報告されていないことが明らかになった。8月28日から30日まで横浜市で開催されている第52回日本癌治療学会学術集会で、大阪市立大学医学研究科腫瘍外科学の小野田尚佳氏が発表した。
甲状腺未分化癌は、甲状腺癌の1-4%を占め、予後不良な癌である。甲状腺未分化癌の患者情報データベースを構築するため、2009年に甲状腺未分化癌研究コンソーシアムが発足し、現在までに1000人以上のデータが集積されている。
1037人を対象とした解析では、生存期間中央値は124日、6カ月生存率が38.9%、1年生存率が19.3%、3年生存率が6.3%であり、81.1%の患者は原病死となることが示された。
また同コンソーシアムによる後ろ向きの検討では、ステージIVA患者において化学療法による予後改善は有意ではなかったが、ステージIVBおよびIVC患者では化学療法をしたほうが予後は有意に改善していた。
高いエビデンスのある治療法はまだないが、エトポシドやシスプラチン、ドセタキセルあるいはパクリタキセルなどが試みられてきた。先行研究でパクリタキセル毎週投与は忍容性と安全性が高く、予後の延長効果が期待されていた。
そこで甲状腺未分化癌研究コンソーシアムを中心に、パクリタキセル毎週投与の忍容性と安全性に関する医師主導前向き臨床試験が開始された。主要評価項目は安全性と忍容性および抗腫瘍効果であった。治療は3週を1コースとして、パクリタキセルは毎週1回80mg/m2を点滴静注した。2014年3月に患者登録が終了した。
2012年4月29日から2014年3月31日までに全国27施設から71人が登録された。うち男性が21人、女性が50人、ステージIVAが10人、ステージIVBが25人、ステージIVCが29人。PS 0が57人、PS 1が9人、PS 2が5人だった。
このうち70人が治療を受け、病理学的に甲状腺未分化癌と確定したのは57人(80.3%)であった。
現時点で、重篤な有害事象は発現していない。2015年3月に観察を終了して有効性に関する結果を公表する予定であるという。