米国Fred Hutchinson Cancer Research CenterのElisabeth F. Beaber氏らは、コホート内症例対照研究(nested case-control study)から、高用量のエストロゲンなどを含む経口避妊薬を過去1年以内に使用した女性で乳癌のリスクが上昇したと報告した。この結果は、近くAmerican Association for Cancer ResearchのCancer Research誌に掲載される。
研究の対象は、乳癌と診断された女性1102人と対照の女性2万1952人。全例がヘルスケアに関する非営利の協同組合(Group Health Cooperative in the Seattle-Puget Sound area)の加入者だった。乳癌の患者は1990年から2009年の間に診断を受けた。
Beaber氏らは、バイアスを避けるため、過去の研究で用いられた患者報告などの方法ではなく、電子カルテを用いて、経口避妊薬の薬剤名、用量、投与期間などについて、詳細な情報を収集した。
その結果、過去1年以内に経口避妊薬を使用した女性は、使用していない女性またはそれ以前に使用した女性と比べて、乳癌のリスクが50%上昇した。乳癌のリスクは、高用量のエストロゲンを含む経口避妊薬では2.7倍、中用量のエストロゲンを含む避妊薬では1.6倍だった。二酢酸エチノジオールを含む製剤では2.6倍、ノルエチンドロンを平均0.75mg含む三相性の製剤では3.1倍となった。一方、低用量のエストロゲンを含む経口避妊薬では、乳癌のリスクは上昇しなかった。
対照群では、過去1年以内に低用量、中用量、高用量のエストロゲンを含む経口避妊薬が1回以上処方されたのは、それぞれ約24%、78%、1%未満だった。
Beaber氏は「過去1年以内の経口避妊薬の使用は、非使用やそれ以前の使用と比較して、乳癌のリスクの上昇と相関することが示唆された。このリスクは経口避妊薬の製剤によって変わる可能性がある」とコメントした。
さらにBeaber氏は、今回の結果は確認が必要であり、慎重に解釈する必要があるとし、その理由を「乳癌は若年の女性では稀であるとともに、経口避妊薬の使用を考慮すべき状態に対する有用性も確立されている。また過去の試験では、経口避妊薬を中止すれば、過去1年以内の使用によるリスクの上昇は低下することが示されている」としている。