大鵬薬品工業は、5月12日、抗癌剤TAS-102(一般名:トリフルリジン・チピラシル塩酸塩)について、進行・再発の結腸・直腸癌患者を対象とした国際共同フェーズ3試験RECOURSEで、主要評価項目である全生存期間(OS)を有意に延長したと発表した。またTAS-102の忍容性は概ね良好で、報告された副作用は過去の試験と同様であったことも明らかにした。
RECOURSE試験の詳細な結果は、6月25日から28日にスペインバルセロナで開催される第16回世界消化器癌学会(ESMO 16th World Congress on Gastrointestinal Cancer)において、国立がん研究センター東病院の吉野孝之氏によって発表される予定だ。
大鵬薬品は、今後、 欧米での早期申請を目指し準備を進めるとしている。日本では既に承認を獲得しており、薬価収載を待っている段階だ。
TAS-102はトリフルリジン(FTD)とチピラシル塩酸塩(TPI)を配合した経口のヌクレオシド系抗悪性腫瘍剤。FTDはDNAの複製時にチミジンの代わりに直接DNA鎖に取り込まれ、DNAの機能障害を引き起こして抗腫瘍効果を発揮すると考えられている。TPI はFTDの分解に関与するチミジンホスホリラーゼを阻害し、FTDの血中濃度を維持する。
RECOURSE試験は、無作為割付・二重盲検・プラセボ対照の国際共同フェーズ3試験で、日本の他、北米、欧州、オーストラリアから800人の患者が登録された。対象は少なくとも2種類以上の標準化学療法(フッ化ピリミジン系薬剤、イリノテカン、オキサリプラチン、ベバシズマブ、KRAS遺伝子に変異のない野生型の場合では抗EGFRモノクローナル抗体)に不応となった治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌患者。TAS-102の有効性を検証することを目的に、患者をTAS-102投与群またはプラセボ投与群にランダムに割り付けた。主要評価項目は全生存期間だった。RECOURSE試験の研究代表者は、国立がん研究センター東病院早期・探索臨床研究センター長の大津敦氏、米Dana-Farber Cancer InstituteのRobert J. Mayer氏、米University Hospital GasthuisbergのEric Van Cutsem氏の3人だった。