乳癌化学療法中の脱毛予防として研究が行われている頭皮冷却法を実施する場合、患者は寒気、冷感を苦痛と感じ、頭痛などが認められるが、体幹の保温のために治療中に電気毛布で持続的に加温することが有効であることが示された。2月8日から9日まで新潟市で開催された第28回日本がん看護学会学術集会で、国立がん研究センター中央病院の矢野美穂氏が発表した。
化学療法に伴う脱毛の予防への取り組みとして頭皮冷却法がある。抗癌剤投与時に頭皮を冷却することで血流を低下させることが有効であると報告されており、海外では頭皮冷却用の装置が発売されている。
頭皮冷却は、プレ冷却として抗癌剤投与前に30分、投与中冷却として1~1時間半、ポスト冷却として抗癌剤投与後約2時間半行う。温度は16度程度だ。
同グループではこの頭皮冷却法に関する研究を行っており、2011年8月から2012年11月までに研究の対象となった22人について、冷却施行に伴う不快感や苦痛症状などの実態について後ろ向きに検討した。
この研究の対象となったのは原発性乳癌で、ステージ1、2、根治的手術が施行され、術後補助化学療法としてAC療法もしくはTC療法4サイクルが予定されている患者。これらの患者について、症状や苦痛の内容とその出現頻度、治療中の症状や苦痛に関する言動、頭皮冷却下での化学療法完遂率などを検討した。
冷却下での治療完遂例は19例(90%)で、冷却中止したのは2例(10%)だった。
頭皮冷却下における苦痛症状については、冷却に関連した苦痛として、頭痛、頭部の冷たさ、寒気、吐き気、ふらつき、倦怠感、冷却に関する精神的苦痛などが見出された。冷却防止の装着について、締め付け感、顎関節痛を感じるとともに、冷却帽子が密着していないことに対する不安などが認められた。
これらの結果から、頭皮冷却法を実施している患者の苦痛症状の出現率はほぼ100%で、多くの患者が寒気・冷感を苦痛と感じており、随伴する症状として頭痛・吐き気が認められたとし、頭皮冷却の継続には体幹の保温が不可欠で、電気毛布の使用は効果があると指摘した。頭痛や吐き気は十分アセスメントを行い、鎮痛剤、制吐剤、抗不安薬など適切な対処が必要とした。冷却帽子を装着することで出現する圧迫、締め付け感、顎関節痛は1クール目に強い傾向にあったが、これは脱毛前で頭髪が多いこと、本人、医療者が締め付けを強くする傾向にあったことによると考えられた。そのため、患者に密着感を確認しつつ、調整を行うことが重要と指摘した。
矢野氏は、患者は苦痛を経験しているが、脱毛予防効果の実感と効果への期待により治療継続の完遂率につながったとし、苦痛症状によって冷却への意欲が減退しないように看護介入を行う必要があるとまとめた。