都道府県のがん対策重点推進事業予算に大きな格差があることが、8月25日に厚生労働省内で開催されたがん対策推進協議会で報告された。
同協議会会長代理でグループ・ネクサス理事長の天野慎介氏ら患者関係委員の有志4人が、都道府県のがん対策担当課に対して調査を実施、「都道府県がん対策重点推進事業」の2010年度予算額と執行額、11年度予算額を調べたもの。調査には、宮崎県を除く46都道府県から回答があったという。
この調査によると、都道府県がん対策重点推進事業の11年度予算額は、全く計上していない0円から、合計で1億円以上計上している県まで、大きな開きがあった。「0円」だったのは、北海道と愛知県で、2道県は昨年度もこの重点推進事業費を計上していない。
厚生労働省は、11年度都道府県がん対策重点推進事業として、次の5つのメニューを挙げている。(1)がん検診に関わる医師に対する緩和ケア研修事業、(2)医療提供体制等の強化に資する事業、(3)がん検診実施体制等の強化に資する事業、(4)効果的ながん情報の提供に資する事業、(5)がんに関する総合的な相談体制の整備に資する事業。
事業の実施に当たっては、その費用を国と都道府県とが2分の1ずつ負担することになっている。この5つのメニューをすべて県予算に計上していたのは、山形県、群馬県、千葉県、佐賀県の4県のみだった。
この5つのメニューの中でも、今年度の厚労省のがん対策予算の目玉となっているのが、(5)の「がんに関する総合的な相談体制の整備に資する事業」で、これは患者・家族の相談にワンストップで対応する院外の相談機関「都道府県がん統括相談支援センター」の設置を想定している。この事業の予算化は、同協議会の前患者関係委員らの要望で実現した。しかし、同調査によれば、総括相談支援センターの事業費に当たる予算を計上したのは9県にとどまった。この総括相談支援センターについては、「必要だが、予算措置できず」と答えている県もある一方で、「必要なく、予算措置できず」と答える県もあった。
「都道府県の財政状況が異なる上、独自予算として組んでいる場合もあれば、他の事業と合わせた予算項目として組んでいる場合もあるので、単純な比較はできないが、がん医療の均てん化という目標とは逆に、地域間格差が広がりかねない実情がある」。天野氏はそう指摘し、患者委員4人の連名で、同協議会会長の門田守人氏と厚労省がん対策推進室長の鷲見学氏に対し、(1)都道府県の予算の執行状況に対する継続的なモニタリングと格差是正に関する提案、(2)国が全額負担する施策の増加――などを求めた意見書を提出した。
天野氏は、同協議会の席上、「患者会、市民などが、がん対策予算に十分な金額を付けてほしいと都道府県に働き掛けたり、議員を通じてこうした予算を措置してほしいと訴えたりしていくことも重要ではないか」と話している。