国立がん研究センターは7月15日、全国のがん診療連携拠点病院で実施している院内がん登録の2008年集計結果の公表に当たり、初めて病院別のデータを示す方針を明らかにした。前回の07年集計結果では、都道府県別のデータのみの公開となっていたが、今回は施設別の集計結果を施設名入りで公表する。25日の都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会に報告後、ホームページに掲載する予定だ。
同センターは、09年11月1日までにがん診療連携拠点病院に指定された377施設にデータ提示を依頼。期限内に提出された359施設で08年に登録された約42万8196件の症例データを集計し、がんの部位や発見経緯、病期(ステージ)、治療法などに関する情報を記載する。なお、病院別データを公表するのは355施設で、その他の4施設は「データの精度が低い」などの理由で公表の対象から外した。
今回の集計結果では、地域がん登録を基に推計した06年がん罹患者数69万3784人の約60%近い情報が集まった。同センター理事長の嘉山孝正氏は「病院別データを公表することで、遅れていた日本のがん登録を少しでも進めたい。そこから得られる疾病に関する情報は、今後の政策の基礎となるはずだ」と意気込みを見せた。また、病院ごとに登録数や性別・年齢の内訳、がんの部位や治療方法といった特徴が明らかになる点について、「他院とデータを比較することで、自院のがん登録の問題点を把握したり、がん診療の内容を見直すきっかけになるのではないか」と期待を寄せた。
ただ、複数の施設で診察を受けている患者のデータが重複して集計されていることや、個人情報保護の観点から各施設で10件以下の数値を表示していないことに触れて、「まだ精度についての課題は多い」(嘉山氏)とした。今後は精度の向上を目指すだけでなく、院内、地域、臓器と3つあるがん登録の情報共有化や、患者や医師に対するがん登録のメリットを明確にすることなどを目標にしたいという。
さらに、患者が相談支援センターに問い合わせれば、「胃がん治療件数はどの病院が多いか」などのデータを収集したり、自身が受けた治療を他の病院の治療内容と比べて評価できるようにして、「患者に還元できるような体制にしたい」と嘉山氏は述べた。なお、標準治療を受けられているかに対しての評価や5年生存率についてのデータは、早くて3~4年後に組み込む見込みだ。