75mg以上のアスピリンを毎日服用することにより、癌死亡、特に消化器癌による死亡のリスクが有意に低下することを、英Oxford大学のPeter Rothwell氏らが明らかにした。論文は、Lancet誌電子版に2010年12月7日に掲載された。
著者らは先に、アスピリンを5年以上にわたって毎日服用すると大腸癌の罹患と死亡リスクが低下すると報告しているが(Lancet誌2010年10月22日号)、今回は様々な癌による死亡に対するアスピリンの利益を明らかにした。
血管イベント予防におけるアスピリン常用の有効性と安全性を評価した無作為化試験の中から、計画された投与期間が4年以上だった研究8件を選んだ。適用されたアスピリンの用量は75mg/日から1200mg/日まで幅広く、対照群には、偽薬または他の抗凝固薬、もしくはそれ以外の抗血栓薬が投与されていた。
これら8件の研究(計2万5570人の患者を登録、癌死亡は674人)が報告していたデータをメタ分析したところ、アスピリンへ群では試験期間中の癌死亡が21%有意に少なかった。アスピリン群の患者が癌で死亡するリスクは、対照群に比べて18%低かった。割り付けからの期間で分けると、5年以上経過した患者では34%低下していたが、5年未満の患者では14%で、後者は統計学的に有意ではなかった。
癌の原発部位を知ることができた6件の研究のデータを分析したところ、消化器癌のリスクは、割り付けから5年以上追跡された患者群で54%低下。一方、非消化器系の固形癌のリスク低下は有意でなかった。
試験終了以降も長期の追跡が可能だった3件の研究では、癌死亡の20年リスクはやはりアスピリン群で低く、すべての固形癌による死亡は20%低下、消化器癌による死亡は35%低下していた。
アスピリンの利益は計画された治療期間が長いほど大きかった。また、割り付け時の年齢が高い患者の方が大きな利益を得ていた。
さらに、肺癌と食道癌による死亡例について組織型を調べたところ、アスピリンの利益は腺癌に限定されることが明らかになった。
75mg/日以上のアスピリンの常用が、試験期間中とその後の癌死亡リスクを低減することを示した研究はこれが初めて。