大腸がんの検査は、大きく2種類に分けられます。「検診法」と「診断法」です。
検診法
検診法はその名の通り、健康で特に日常生活に支障を来すような症状がない人に対して行われる検査です。大腸がんの検診法には、便を調べる「便潜血検査」、肛門から触診によって直腸にしこりがないかどうかを確認する「直腸診」があります。
検診を受ける人のうち、大多数の人はがんではないため、受診者の負担が軽い簡便な方法になっています。がんである可能性が高い人を効率よく選び出し、より詳しい検査を受けてもらうようにすることが検診法の目的です。
【便潜血検査】大腸がんでは、血管が豊富な腫瘍の表面から、また腫瘍の一部に潰瘍ができてその潰瘍から出血する場合があります。このような場合、便が通るときにその部分がこすられて、便に血液が付着・混入します。この便中に混じったわずかな血液を検出するのが、便潜血検査です。

便潜血検査では、血液中に存在するヘモグロビンというタンパク質を検出します。ヘモグロビンは、高い温度の中や、時間がたつにつれて、壊れてしまうという不安定な性質を持っています。このため、正確な検査結果を得るために、採取した便はできるだけ早く専用の容器に入れて冷蔵庫などの冷暗所に保管し、2日分の便を取ったら早めに提出する必要があります。また、血液は便の中に均一に混じっているわけではありません。専用のスティックで便の表面のあちこちをまんべんなく少しずつこすり取ることで、より正確な結果が得られます(図7)。
この検査法が陽性だったからといって、必ずしも大腸がんがあるとは限りません。大腸がん以外の疾患(良性腫瘍や炎症など)でも出血が認められる場合があるからです。また、歯茎など口の中の出血にも反応する場合があります。肉類や魚類など、ヘモグロビンを豊富に含む食事を摂っていた場合にも陽性となることがあります。
逆に、陰性だからといって大腸がんがないとも言い切れません。大腸がんがあったとしても、出血が見られない日もあります。また、検査法によっては、ヘモグロビンの作用を相殺してしまうビタミンCなどの存在によって、陰性の結果が出てしまうこともあります。
以上のように、大腸がん検診は絶対確実なものではありませんが、厚生労働省が実施した疫学調査では、便潜血検査を受診した人はしない人に比べて、大腸がんで亡くなる危険性が低いという結果が得られています。40歳を過ぎたら、1~2年に1回は積極的に大腸がん検診を受けるよう心がけましょう。
【直腸診】大腸のうち、肛門近くの20センチメートルほどの領域を直腸と呼びます(詳しくは「大腸がんとは」参照)。直腸診とは、直腸のうち、より肛門に近い部分にがんがあるかどうかを、医師が指で直接触って調べる検査です。
医師は薄手の手袋をして、肛門から指を入れ、直腸部分を触って診断します。がんかどうかまではわかりませんが、こぶ状のものやしこりがあるかどうか、それは肛門からどの程度の位置にあるのか、といったことがすぐその場でわかります。特に、便に目で見てはっきりとわかる出血がある場合や、肛門から近い直腸部分にがんがある場合に、直腸診は有用です。ただし、肛門から指で触って届かない場所にあるがんを診断することはできません。
診断法
診断法とは、日常生活に支障を来すような何らかの症状がある人や、検診法で何らかの病気が疑われた人に対して、より正確にからだの状態を調べ、診断を確実なものにする目的で行われます。大腸がんの診断法としては、肛門から内視鏡を挿入して大腸内を詳細に観察する「大腸内視鏡検査」、大腸に造影剤を注入してX線撮影を行う「注腸造影検査」があります。
検査を受ける人が病気である可能性が高いため、正確な診断ができるかどうかという点に重きを置いた検査法です。
【大腸内視鏡検査】大腸内視鏡検査は、肛門から軟らかい管状のカメラ(内視鏡)を挿入する検査法です。まず小腸との境目まで内視鏡の先端を進め、その後、徐々に内視鏡を引き出しながら結腸、直腸を詳しく観察します(図8)。
内視鏡検査の最大の特徴は、大腸の内腔を直接観察できる点です。がんの位置や形、大きさなどを確認するとともに、観察用の色素をまいて大腸の表面構造を詳しく観察することで、がんがどの程度の深さまで広がっているかについても予想することができます。
内視鏡検査時に、大腸組織の一部を専用のピンセットに似た器具を用いて採取して(生検といいます)顕微鏡で詳しく調べることで、がんかどうかを正確に判定することもできます。発見されたものが小さな早期がんだった場合は、内視鏡検査時に切除してしまい、それで治療終了となることもあります(詳しくは「大腸がんの内視鏡治療とは?」 参照)。
検査前には、腸管の中が観察しやすいように、下剤や腸管洗浄液などを使って腸内を洗い、大腸の中を空っぽにします。前日から、検査用の消化のよい食事(検査食)を摂ってもらう場合もあります。
【注腸造影検査】肛門から造影剤(バリウム)と空気を注入し、X線写真を撮影する検査法です。胃がんの検査で、バリウムを飲んだことがある人がいるかもしれません。原理はそれと同じで、肛門からバリウムと空気を入れていくことで、大腸の輪郭を調べます(図9)。腸壁が変形しているなどの異常があれば、大腸がんの可能性が考えられます。
注腸造影検査を実施する際には、前日から、検査用に特別に作られた検査食を食べます。消化がよく、体内に残りにくい内容の食事になっています。前日の夕食後から下剤を飲んで、検査当日の朝までに大腸内が空の状態になるようにします。これは、食べ物が腸の壁にくっついていると、正確な検査結果が得られにくいためです。
検査では、大腸の壁にバリウムが付着するように、身体を横に向けたりしながら注入していきます。大腸の中は空っぽなので、検査の時には空気を入れて、しぼんだ大腸を膨らませて腸の壁の輪郭が確認できるようにします。身体を上下にしたり、揺さぶったりして大腸の壁にバリウムを付着させるので、大腸の形、大きさなどがわかります。
こぶのような形になったがんは見つけやすいのですが、小さながんや平たく広がったがんは見つけにくい場合があります。
[参考サイト]
・日本対がん協会
・日本消化器内視鏡学会「市民のみなさまへ」検査と治療について
・“BRAVE CIRCLE”大腸がん撲滅キャンペーン
・大腸癌研究会「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2014年版」
・認定NPO法人キャンサーネットジャパン「もっと知ってほしい大腸がんのこと(2017年版)」