大腸がんの自覚症状は、大腸のどの場所にがんができるかによって異なってきます。早期の大腸がんではほとんど自覚症状はみられず、大腸がんに伴う特徴的な症状もありません。
つまり、症状がないからといって、大腸がんがないとは言えないのです。
主な症状は、がんからの出血によって起こる下血・血便(血液が便に混ざること)・貧血と、がんの発育により腸管の内側が狭くなることによって起こる便秘・下痢・腹痛・通過障害(腸閉塞)などです。特に血便は、痔と勘違いして受診が遅れるケースがあるため、注意が必要です。
小腸に近い上行結腸や横行結腸にできたがんは、便がまだ固くないために腸管が少し狭くても腹痛などを起こしにくいのが特徴です(図6)。また、肛門までの距離が長いために、血液の中にあるヘモグロビンが腸の中で分解されてしまい、血便かどうかがわかりにくくなります。このため、盲腸や上行結腸、横行結腸など、結腸の右半分にできたがんは早期発見が難しく、かなり進行してから見つかることが多いとされています。がんが大きくなると、出血に伴う貧血のため動悸、息切れを起こしたり、腹部にこぶ状のしこりを感じたりすることがあります。
より肛門に近い部位である下行結腸やS状結腸にがんができると、血液や粘液が混ざった便が出たり、下血がみられたりします。便が固くなっているため、腸管が少しでも狭くなると、腹痛や便秘を起こしたり、腸管の内側が完全にふさがって痛みや嘔吐などを起こす腸閉塞(イレウス)と呼ばれる状態になったりすることもあります。
肛門に非常に近い部位である直腸にがんができた場合には、鮮やかな赤色の血便が出たり、排便後にまたすぐ便意を催す残便感を感じたりすることがあります。肛門に近い腸管が狭くなるため、細い形の便が出たり、便秘や下痢を繰り返したりします。
時には、肝臓や肺など、他の臓器に転移したがんが先に発見されることもあります。こうした場合には、大腸にできたがんは既にかなり進行してしまっていることが多いのです。
[参考サイト]
大腸癌研究会「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2014年版」
認定NPO法人キャンサーネットジャパン「もっと知ってほしい大腸がんのこと(2017年版)」