こんにちは、Cadetto.jp管理人の増谷です。みなさん、「医療漫画」は読まれますか?Cadetto.jpでも、「医療マンガ・ドラマの裏話を教えます!」のコーナーで、『Dr.アシュラ』や『コウノドリ』など多くの作品を紹介してきました。

 神奈川県横浜市はこのたび、医療広報の一環として、医療に関するコミュニケーションギャップの改善を目的とし、漫画を活用した取り組みを開始しました。その名も「医療マンガ大賞」。同じ出来事に対しても患者と医療従事者では感じ方が違う――という「視点の違い」を、漫画を通して体感しようという試みです。


コルクの代表取締役会長で編集者の佐渡島庸平氏。

 今回は、医療マンガ大賞創設に当たり、審査員らによる座談会などが行われました。漫画家などのクリエイターのエージェント業を行うコルク(東京都渋谷区)の代表取締役会長で編集者の佐渡島庸平氏は、「コミュニケーション・ギャップは、ほぼ全ての業界で起きている」と言います。編集者である佐渡島氏のところには、「俺の人生は超面白いから漫画にしてほしい」と言ってくる人が後を絶たないとのこと。しかし、佐渡島氏が話を聞いてみると、漫画や小説にできる面白さはないそう。これは、編集者ではない人には何が面白い物語になって、何がならないのかということが分からないというギャップから起こることだと言います。「この構図は全てに共通する。行政が税金対策の情報などを良かれと思って出していても、知識のない受け取り側にはめんどくさいと思われてしまう。医療も、医療知識は生死にかかわるからちゃんとギャップをなくして理解してくれよって医療側が勝手に思っているだけ。ギャップを埋めようというインセンティブが受け取り側である患者側にないので、難しい」(佐渡島)。

 このコミュニケーション・ギャップの埋め方として、「SNS医療のカタチ」として情報発信をしている医師の大塚篤司氏は、「たたかない(攻撃しない)、優しい発信が大事だと考えている」と言います。もともとは約10年前から匿名ブログでニセ医学を“たたく”ブログを書いていたそう(「ニセ医学」関連記事)。そのとき、「たたくと結局、自分がたたかれて終わることが分かった。声が届かないので、発信すること自体が嫌になって、やめてしまった」とのこと。しかし、やはり情報発信が必要だと考えたことから、実名で1年3カ月前からTwitterを始めました。今は、ニセ医学についても「患者が、自分で一番よいと思うものを選んだ結果なのだから、たたくというのは違うと思うに至った」と話しました。

 大塚氏らは今回、Twitter上で寄せられた156ものエピソードから、今回の医療漫画の題材となるエピソードを4つ選びました。「それぞれ思い入れのあるエピソードを寄せていただいたので、医師として考えさせられたり、メンタルに“くる”作業だった」とのこと。また、医療Webメディアを運営するメディカルノート(東京都渋谷区)共同創業者の井上祥氏は、「転院」や「在宅医療」、「脳卒中」といったシチュエーションで患者と医師の両方の視点から描かれるエピソード6つを制作しました。

左から、佐渡島庸平氏、こしのりょう氏、大塚篤司氏、井上祥氏。

 審査員の1人である漫画家のこしのりょう氏は、前述の『Dr.アシュラ』の筆者です。医療漫画を描き始めたきっかけは、当時『ブラックジャックによろしく』が流行っていたため、もう1つ医療物を連載したいと思っていた編集部が、看護師の妻を持つこしの氏に提案したことでした。当時、サラリーマンだったこしの氏は、職場の人間関係がうまくいかずに悩んでいました。家で聞く妻の愚痴も、同じく職場の人間関係のことが多かったため、これなら描けるかもしれないと医療漫画を描き始めたそう。こしの氏は、「描いているうちに患者に感情移入していって、医療に興味を持っていった。最初は看護師からの視点で、ダメな医師や経営陣に喝を食らわすような内容だったが、医師などにも取材するうちに、医師の目線も知って、自分の医療に対する考え方もだいぶ変わった」と振り返ります。まさに、医療漫画を通して別の視点を体験したこしの氏。医療漫画を描いて応募する人に向けて、「同じエピソードで漫画を描いても、描く人のキャラクターによって全く違うものになるはず。思いっきり自分を出してほしい」と期待しました。