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シリーズ◎しまね初期研修医合同研修会で語られたこと《3》
「島レジプロジェクト」の潜在力に期待大
初期研修医の初期研修医による初期研修医のためのオンライン研修

東西に長い島根県、一堂に会した研修が難しい

 PATに代表されるような様々な臨床上の成果を生み出してきた島レジプロジェクトとは、どのようにして生まれたのでしょうか。「これまで」を振り返ってみます。

 このプロジェクトは、昨年のしまね初期研修医合同研修会に参加した初期研修1年目の医師たちが自主的に始めたものです。きっかけは、合同研修会の主催者(注)が投げかけた「初めてのプロジェクト」という企画でした。初期研修医が取り組みたいプロジェクトを提案してもらい、採用された企画には島根県から30万円の賞金を贈るというものでした。「初めてのプロジェクト」の約束事は、一部の病院だけでなく全研修病院の研修医が学べる、立案と運営は研修医が自由に行ってよい、できれば通年のプロジェクトであってほしい、などでした。

(注)一般社団法人しまね地域医療支援センター(理事長:島大医学部附属病院長の井川幹夫氏)。同センターの会員には、島根大学、島根県医師会、県内の医療機関、市町村、そして島根県が名を連ねています。

 島レジプロジェクトのリーダーを務める金築駿吾氏(島根県立中央病院)は、「研修医のスキルアップや研修医同士が交流できる機会があったらいいよね、と提案したことが初めてのプロジェクトに採用された」と話します。「提案者だったので、リーダーになってしまったんですが……」(金築氏)とも。いやいや、立派にプロジェクトを牽引しているのだと思います。合同研修会の開催中、様々な先生方からリーダーの評判をうかがいましたが、みなさん手放しで褒めていましたから。

 しまね初期研修医合同研修会は、医師として歩み出したばかりの初期研修医にとって、貴重な研修の機会になっています。でも、一堂に会しての研修会は、今のところ1回きり。その後は各研修病院での研修に入っていくわけですが、せっかく知り合えたのだから研修医同士で支え合い切磋琢磨していきたいという金築氏の思いは、多くの研修医の賛同を得たのでした。

 「でも、県内全ての研修医が定期的に集まることは難しいという問題に直面しました」。こう振り返るのは、前出の長野氏です。

 日本地図を見ると分かりますが、島根県は東西にとても長い県です。東の松江市から、西の益田市まで167キロもあるそうです。「私が研修している益田赤十字病院から、(出雲市の)島根大学までも、車で3時間ほどかかります」(中野里菜氏)。ひんぱんに、リアルに一堂に会して研修を行うというのは、現実的ではないわけです。

 ではどうするか。話し合う中で、「それなら各研修病院をネットワークでつないじゃえばいい」となり、「テレビ会議システムを導入しようとなった」(長野氏)のだそうです。

 結果、東西に長い島根県内に分散した初期研修医たちは、自分たちでオンライン研修を運営することで、切磋琢磨する機会を確保したのでした。「研修病院をネットワークでつなぐことで、自分の病院にいながら県内全ての研修医と顔を合わせることができるようになりました」(中野氏)。

事前学習でクリニカルクエスチョンを出し合う

 オンライン研修のために活用したのが、テレビ会議システムの1つである ZOOM でした。年会費2万円程度で持続的に利用できることが、採用の決め手だったようです。昨年の8月には、島レジプロジェクトに参加する7つの研修病院にテレビ会議用の機材を導入し、オンライン研修の環境を整えました。

 では実際のオンライン研修は、どのように行っているのでしょうか。

 第一に、テレビ会議システムを使って毎回、事前学習を行っているのがポイントです(写真2)。事前学習では、県内7つの研修病院の初期研修医が症例を持ち寄り、初期研修医だけで症例検討を行っています。症例を基に、鑑別や検査、コンサルトや入院などの必要性を討論し、自分たちで臨床上の疑問点(クリニカルクエスチョン)を探すのです。参加者を初期研修医に絞ったのは、指導医らがいると上下関係を意識して、なかなか自由な意見が言えないのではないかと考えたからでした。

写真2 テレビ会議システムを利用した事前学習(島レジプロジェクトのフェイスブックから)

 事前学習で集約した意見や疑問点は、講師を引き受けてくれた先生に伝えます。講師には、それらを基に島根県の初期研修医のために講演をお願いするのでした(写真3)。

写真3 テレビ会議システムを利用したオンライン研修の様子(島レジプロジェクトのフェイスブックから)

 これまで快く講師を引き受けてくれたのは、前述の坂本壮先生をはじめ、児玉和彦先生(医療法人明雅会こだま小児科[和歌山県])、岸田直樹先生(手稲渓仁会病院[北海道]総合内科・感染症科)らです。テーマは、「意識障害患者への対応」「救急外来での小児疾患の対応」「不明熱へのアプローチ」など、研修医にとって身近なものを選んでいます。

 ちなみに開催の時間帯は、初期研修医の集まりやすい時間帯を調べた上で、平日の月曜日や火曜日の19時から21時に設定しています。各研修病院の院長には、しまね初期研修医合同研修会の主催者から島レジプロジェクトへの協力が要請されていますので、他の用事と重ならない限り、初期研修医は参加できます。

 開催に合わせ、各研修病院で決めた初期研修医のリーダーは、オンライン研修への参加を呼びかけたり、事前学習で提示する症例を選んだりするそうです。また、開始時間に合わせてネット会議システムを立ち上げ、その病院の初期研修医らとともに講師の講義を聴き質疑応答を繰り返すのです。

 当日、参加できなかった研修医のためのフォローアップもあります。オンライン研修の内容を保存し、必要な時に自己学習できるようにしているそうです。

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Cadetto通信
日経メディカル Online編集部の「Cadetto.jp担当」約2名(飛び入りあり)が、時に熱く時にまったりとつづるコーナー。取材のこぼれネタや企画の予告編、耳よりなイベント、面白い人&面白い話、編集部の秘密、困っていることや皆さまへのお願いなどなど、自由度高め、文章短めで参ります。時には「病院ランチ食べ歩き」などの特別企画に変身することも。

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