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シリーズ◎しまね初期研修医合同研修会で語られたこと《2》
自分だけでなく、みんなで成長することを考えて
松江赤十字病院長の大居氏からの「研修医に贈る言葉」

いかに付き合うか
毎日2回は患者さんのもとへ

 さて、次は社会とどのように付き合っていくかです。ここでは「礼儀」と「誠実」が重要です。

 礼儀とは相手を大事にすることです。相手をリスペクトすることです。これはとても大事。「最初の徳」と言われています。初対面では、礼儀が特に大切です。

 次に誠実です。礼儀が最初の徳なら、誠実というのはそれを引き継ぐ徳と言われています。誠実とは、忘れないことであり、変わらないことです。私はおととし1週間ほど入院しましたが主治医が1回しか会いに来ませんでした。1週間入院していて1回しか来なかった。私も医者です。病気のこともよく分かっている。治療のこともよく分かっている。副作用のこともよく分かっている。主治医が確実に治療をして良くなっていることも分かっている。だけど1回しか訪室しないというのはよくないと思います。

 研修医の皆さんなら、担当の患者さんのところへは毎日2回は行った方がいいです。朝一番に行って、夕方もう1回。何回行ってもいいです。最低でも2回は患者さんの元に行くようにしましょう。そして、それを変えないことです。

 例えば、癌の末期の患者さんが苦しんでいるとします。だんだん悪くなって、私、もうだめでしょうかという感じになるわけです。そのときに、医師は足を運びにくくなるんですよ。行きにくい。病室に行くのはやっぱりつらいです。だけど行かなかったらどうなりますか? 患者さんは見捨てられたと思うんですね。だから、やはり誠実、変わらず訪室してください。診察しなくても顔を見せるだけでもいい。それを続けてほしい。

写真3 「いかに付き合うか」で大切なのは「礼儀」と「誠実」

最後に本当に大事なこと
自分だけでなく、みんなで成長することを考えて

 最後に、本当に大事なことをお話しします。「数える(測る)」と「徒弟制」そして「For the team」です。

 2004年度から新臨床研修制度が始まり、今では一般病院で研修する研修医の方が、大学病院より多くなっています。時代は変わりました。いいことも多い。臨床の経験をものすごく積めます。ただ、フィジシャンサイエンティスト(physician scientist)、医者で研究する人が減っているんじゃないかと、多くの人が心配しています。私もその一人ですが、皆さんには科学的なものの見方を忘れないでほしいんです。

 リサーチマインドを忘れるな、と私は大学から外の病院に出るときに言われました。臨床しながら研究しろという意味なんだと思います。でも実践は難しい。

 そこで一番手っ取り早い方法を教えます。それは数える、測るということです。これをやってみてください。例えば1年間にこの病気の人は何人来たんだろうと数えてみる。あるいは、この患者さんのこの発作は何回起こったかを数える。数えること、数値化すること、測ること、これらは科学の第一歩です。研究の第一歩。何でもいい。興味を持ったことを測ってみてください。数えてみてください。そうすると何かひらめくかもしれません。そこに研究テーマが生まれます。

 徒弟制については、今はカリキュラムというのができて、研修制度ができましたがいまだに徒弟制は変わりません。特に外科はそうですね。やはり昔のような徒弟制の部分が残っています。これをネガティブに捉えないでほしい。外科の例を話しますと、例えば手術中、メーンで手術を執刀する先生がいます。向こう側に第1助手がいて、周りをいろいろな人が囲んでいます。研修医は一番外ですね。その立ち位置が年月を経て、だんだん内側に近づいていくわけ。いきなり中に入れるわけはない。ネガティブに捉えず、ちょっとずつ経験していくということをやるしかない。

 本当の勉強は正規のカリキュラムの外にあることが多い。実際仕事をしていて先輩からアドバイスをもらう部分もありますけど、それ以外のことも多い。いろいろなことに気付いて、それから仕事の外で、仕事が終わったときに教えられることがあります。自分で気付くこともある。先輩から今日は飲みに行こうと誘われたら、特に指導医の先生から言われたらすごいチャンスかもしれない。飲み会の席でいろいろなことを教えてもらえるかもしれない。面倒くさいなと思うかもしれないけど、いいこともあるかもしれません。

 最後に「For The Team」。これが一番大事。要するに、自分自身で努力するのは当たり前です。しかし、一人の個人が進歩しただけではチームは勝てないですね。野球でも、サッカーでも、ラグビーでもそうです。1人がうまくなったからといって、チームが勝てるわけではありません。チームで勝つということを考えないといけない。

 日常診療においても、チームで勝つということを考えてください。自分の技を磨くのは当たり前ですけど、それだけではチームは勝てない。患者さんは救えません。チームと一緒に仕事をするという視点を忘れないでほしいと思います。

 病院も同じです。1つの病院だけが栄えてもだめなんです。今は地域包括医療の時代です。1つの病院だけ勝ち残ってもだめなんです。地域の開業医さんと連携を取って、それから介護をする人たちと連携を取って、それで地域の人の病気を治したり、ケアしたりするんです。そういう時代です。ましてや病院の中で患者さんを治す場面で、どうしたらこの人が良くなるんだろうとチームで考えるということが一層大事になります。

 研修医もそうです。2年間一緒に初期研修を行うチームです。自分が伸びることだけ考えないで、みんなで成長することを考えましょう。これが今日一番言いたいことです。

 最後に本の紹介です。『医者は現場でどう考えるか』という本です。内科医の基本的な考え方とか救急医の話も出てくるんですけど、これはとても面白い本です。それから外科系に行きたいと思っている人には、『医師は最善を尽くしているか』という本がお勧めです。これは外科医が書いた本です。英語のタイトルは『BETTER』。外科医のすごくかっこいい場面が書いてある。これもいい本です。『実践知』という本もいいです。むしろ指導医向けの本ですが、チームとしてみんなで成長しようということが書いてあります。まだ本格的な研修が始まってないでしょうから、今のうちに読んでもいいかもしれません。

写真4 大居氏が勧める3つの本
ジェローム グループマン『医者は現場でどう考えるか』(石風社、2011)。アトゥール・ガワンデ『医師は最善を尽くしているか』(みすず書房、2013)。金井壽宏、楠見孝編『実践知』(有斐閣、2012)

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Cadetto通信
日経メディカル Online編集部の「Cadetto.jp担当」約2名(飛び入りあり)が、時に熱く時にまったりとつづるコーナー。取材のこぼれネタや企画の予告編、耳よりなイベント、面白い人&面白い話、編集部の秘密、困っていることや皆さまへのお願いなどなど、自由度高め、文章短めで参ります。時には「病院ランチ食べ歩き」などの特別企画に変身することも。

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