こんにちは。Cadetto.jp編集委員の三和です。4月5、6日の2日間にわたって行われた「しまね初期研修医合同研修会」の報告です。今回は、松江赤十字病院(島根県松江市)院長の大居慎治氏からの「研修医に贈る言葉」を紹介します。


写真1 「ちょっとおやじ的な話をさせていただきたい」と語り始めた大居慎治氏

 私は、研修医の皆さんのお父さん、お母さんの年代だと思います。私の子どもがちょうどあなた方ぐらいですので、ちょっとおやじ的な話をさせていただきたいと思います。

 まず図1をご覧ください。これは、マズローという人が提唱した欲求の段階を示しています。「生理的欲求」というのが一番下で、食事とか仮眠とか様々な欲求が含まれます。これが満たされないとなかなか大変です。

 これが満たされると、次が「安全の欲求」ですね。安全に仕事ができるということ。先ほど先生方のメンタルヘルスについての講演がありましたけど、少しメンタルで怪しくなっても大丈夫なように対応しようというのが安全の欲求です。それが満たされると「所属と愛の欲求」となります。職場の一員として、皆さんが認められるということですね。

 その上にあるのが「承認の欲求」。仕事で「よくやった」と認められたい気持ちです。一番上は「自己実現の欲求」です。自己実現って皆さん分かります? 難しいですよね。人生の究極の目標というとちょっと大げさかもしれませんけど、そんな感じですね。

 皆さんの中には、将来、日本を代表するような医者になりたい、その道の権威になりたい、あるいはノーベル賞を取りたいと思っている人がいるかもしれません。そこまで高い目標ではなくとも、自分の専門とする領域でエキスパートになりたいと思っている人もいるでしょう。そんな話をします。

図1 マズローの法則

いかに学ぶか
自ら進んで「脳みそのベンチプレス」を

 では、皆さんが具体的に何をしたらいいのかをお話しします。

 まず勉強の仕方。初期研修での勉強は、医学部のときとは様変わりします。仕事をしながら勉強するわけです。どういうふうにして勉強したらいいのか、アドバイスします。

 アクティブ・ラーニング(Active learning)が大事です。能動的な学習ということです。自分から進んで学ぶ。今までの大学での勉強ってどうでした? 講義が多かったですよね。講義形式の場合、2週間後に話した内容の何パーセントを覚えているか分かります? だいたい10%ぐらいと言われています。ただ、同じ講義を聞くのでも、すごく勉強になっている人と、そうでない人がいます。どうしてかというと、アクティブに話を聞いているかどうかの違いなんです。

 アクティブに聞くためには、どうしたらいいか。答えは「自分との対話をする」です。医学部で基礎的な部分は習っています。その知識をもとに、自分自身と会話をしながら講義を聞くのです。自分との対話ができる人は、学習の効率が上がります。

 それからもう1つ言っておきたいのは、これからは誰も勉強しろとは言ってくれないんですよ。だから自分で勉強しましょう。ある人が「脳みそのベンチプレス(注)」と言っていますが、例えばアスリートは必ずベンチプレスをしますね。勉強にも必要です。ここでアドバイスしておきたいのは、「頭を使ってください。頭に負荷をかけてください」です。

 例えば、文献を読む。なかなか専門の文献を読むのは難しいですけど、チャレンジしてください。できれば英語の文献を読んでください。『The New England Journal of Medicine』という臨床雑誌がありますけど、私はこれを買って読んでいます。毎週手元に届きます。全部は読めないですけど、一応全体に目を通すようにしています。やっぱりそういうことをしないとだめです。頭を使って勉強するということが大事。それを忘れないようにしてください。

 学習で次に大事なのは、リフレクション(Reflection)。日本語では「省察」と言います。リフレクションには、2種類あります。1つ目は行為しながらの省察。仕事をしながらその場でリフレクション、反省しながら、考えながら仕事をするということです。「reflection in action」と言います。

 もう1つは「reflection on action」。これは、1日の仕事が終わってから、その日を振り返るということです。「on」の意味は接着でしたね。ですから仕事を終えて間もないときに振り返りをするということです。

 この2つを大切にしてください。「仕事をしながら振り返りつつ仕事をするということと、仕事を終えて1日を振り返る」。これをやってみてください。

(注)大島純、他 「再考:アクティブ・ラーニング」(医学教育48巻4号、205-220頁、2017年)

写真2 最初の贈る言葉は「いかに学ぶか」