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シリーズ◎しまね初期研修医合同研修会で語られたこと《1》
初期研修医がやってしまいがちな10の失敗例
島根大の和足孝之氏が「研修生活を10倍楽しくする方法」を伝授

「報告、連絡、相談」が大事

 失敗例の2は「自分で何でもできる」と思ってしまうこと。勉強ができる人は、多くの知識を持っています。しかし、知っているから診療ができるわけではありません。「『知っている』と『できる』をはき違えてしまい、結局何もできず、周りから仕事を頼まれなくなってしまうこともある」(和足氏)。

 こんな時の打開策が「ほうれんそう」だそうです。「報告、連絡、相談」が大事と説く和足氏はこう続けます。「できる研修医とは、できる範囲のことは的確に行い、不安があるときは必ず上級医に相談できて、緊急時には反射的に連絡することができる研修医です」。

コールがあったら、まず動こう

 3つ目の失敗例は、病棟からコールがあったときの対応でした。「自分は病棟からのコールを面倒臭がって、かつ難癖をつけるような研修医だった」と明かす和足氏。「研修医である皆さんのコールの返事は、『○○しといてください』ではなく、全例で『すぐ行きます』が正解です」と強調しました。

 今一度、コールとは何かを考えてほしいとも。「病棟からのコールは、自分たちの管理が悪いか、患者さんが悪くなる可能性を意味する」。こう話す和足氏は、「フットワークだけが研修医の唯一の武器」なのだから、「コールがあったら、患者さんのために自分にできることは何かを考え、まず動きましょう」と語りました。

プレゼン力をつけよう

 4つ目の失敗例は、プレゼンテーションの問題でした。「私は、プレゼンが下手過ぎて、指導医に怒鳴られ、責められ、キレられました。上級医へのコンサルトが嫌で、嫌で、結局、報告するのが遅れるために診療が遅れがちになりました」。しかし、「プレゼン力=臨床力」と気づいたときから、和足氏は、考える力とコンサルト能力を高めていったと言います。

 例えばとして、こんなプレゼンを例示しました。

ダメな例として

 「症例は39歳の男性で……、昨日は腹痛があったそうですが、今日は朝に痛くなってERに来られて、現在も痛みが軽度あります。採血結果は炎症反応が8で、他はあまり問題がありません。……が、嘔吐もしていて……」

 「これでは、どうしてほしいのか分かりませんね。では、以下ではどうでしょう」。

良い例として

 「症例は39歳の男性で、昨日から続く腹痛で来院されました。症状と炎症所見から虫垂炎を疑っているのですが、一緒に診察をしてもらえないでしょうか?

 こちらだと「何をしてほしいか分かりやすい」と和足氏は指摘します。

 和足氏が身に付けてほしい考える力とは、「症例の最も必要な情報、解釈、治療方針を、相手に分かりやすく端的に伝えるための高い思考力であり、診断の知識、検査や治療の適応の理解、入院前退院前などの社会的配慮も考えられる総合力」だといいます。

 また、コンサルト能力とは、情報収集を効率よく行い、何が大事で何が不要かを取捨選択する能力とのことでした。その上で、実際にプレゼンする際は、「ちょっと前に準備練習をすることが重要で、最初のワンセンテンスで相手に情報をプレゼントすることが大事である」だとアドバイスしました。

超多忙で患者さんを危ない目に

 5つ目の失敗例は、「あれやこれやと仕事が舞い込んでしまい、対応が間に合わず、結局、患者さんを危ない目にさらしてしまうことがあった」でした。研修医なら誰でもが遭遇することかもしれません。

 和足氏は、多くの仕事を抱え込んでしまい身動きができないという状況に陥らないために、優先順位を考えて対応することが必要と説きます。そのためには、目の前の仕事の優先度を「緊急か緊急でないか」と「重要か重要でないか」の2つの軸で整理して、「緊急かつ重要」の仕事に最優先で対応すべきだと語りました。

 和足氏は、仕事を素早く間違いなくこなすための術も伝授しました。最も強調したのは「必ずメモをとること」。また、研修医なら誰でもが持っているスマートフォンをフル活用することも、仕事に欠かせないそうです。

態度に問題があるのかも

 「他の失敗例として、初期研修医時代に、お母さんからクレームをもらったことがあります。そのことがもとで、最も怖いと恐れられている指導医に呼び出されました」。

 何が良くなかったのでしょうか。「僕は勘違いしていました。研修医こそ知識と技術を高める必要があると思っていました。しかし、研修医に本当に必要な能力は、知識、技術、態度の中で何がと考えたら、『間違いなく態度だった』のでした」。「自分の家族、恋人でもいい、子どもだったらと考えて診てほしい」。和足氏のメッセージでした。

憧れの先生がいない

 「この病院には、憧れの先生なんていないし、学ぶことができない。そもそも教えてくれないし」。そんな思いに襲われたことも失敗例の1つでした。和足氏は問いかけます。「みなさん、本当にロールモデルはいないのですか?」。

 「そういう場合は、上級医の良いとこ取りをすればいいのです」。和足氏はこれを「文殊の知恵戦略」と名付けました。完璧な理想の指導医を見つけるなんて、そもそも不可能なのです。であれば、どの病院にも必ずいる上級医の一番良いところを見つけて真似して吸収しようとすることが、研修医として成長するきっかけになるはず……。

 「憧れの先生がいない」なんていう前に、目の前の上級医の良いところを学ぶ、という姿勢がとても必要とのことでした。

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Cadetto通信
日経メディカル Online編集部の「Cadetto.jp担当」約2名(飛び入りあり)が、時に熱く時にまったりとつづるコーナー。取材のこぼれネタや企画の予告編、耳よりなイベント、面白い人&面白い話、編集部の秘密、困っていることや皆さまへのお願いなどなど、自由度高め、文章短めで参ります。時には「病院ランチ食べ歩き」などの特別企画に変身することも。

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