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自分のままでいられる最後の時をどう過ごすか
50歳でアルツハイマーを宣告された言語学者の決断「アリスのままで」
原作は神経学者、監督のグラッツァー氏がALS闘病中に撮影した最後の作品

認知症の介護会議に呼ばれ、自分の気持ちを素直に表したスピーチをしたアリス。(c)2014BSM Studio.All Rights Reserved.

 記憶を失っていくアリス自身の葛藤と、そのアリスをいかに支えるか、支えつつも自分の人生をいかに生きるかという家族の葛藤が描かれます。ジュリアン・ムーアは、アルツハイマー病の女性を演じるにあたり、様々なリサーチをして臨みました。「発症した本人の目線でストーリーが展開する作品で、アリス自身の経験が描かれました。そのため、アルツハイマー協会の代表や医師、研究者をはじめ、アルツハイマー病と診断されたばかりの40代、50代の女性とも話しました。ケア施設にも行きました。全ての段階の人の話が聞きたかったのです」とコメントしています。劇中で次女のリディアが「(アルツハイマー病って)どんな感じか教えて?」と尋ねた場面、アリスの答えはジュリアンが実際の患者から聞いた話を基に構成したそうです。

検査の結果、家族性のアルツハイマー型認知症が長女のアナにも遺伝していると分かる。
(c)2014BSM Studio.All Rights Reserved.

 病状については、ドラマチックな展開はないのがリアルな本作。それは、原作者のリサ・ジェノヴァが、うつ病やパーキンソン病の病因学、脳卒中後の記憶の喪失などを主な研究領域としている神経学者だということもあるかもしれません。

 加えて、監督・脚色は、ウォッシュ・ウェストモアランドと、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の持病を持つリチャード・グラッツァーのコンビ。2人が本作の映画化をプロデューサーに持ち掛けられた当時は、リチャードがALSと診断されたばかりでした。診断結果を待ちながらどんどん大きくなっていく不安や、人生の最盛期に突き落とされるつらい感覚は、グラッツァーと、プライベートでも夫としてグラッツァーを支えてきたウェストモアランドが嫌というほど味わったもの。「今この映画を引き受けていいものか」と、とても悩んだのだとか。しかし原作の最後が2人の予想外の展開だったことから、「これを映画にしよう」と決めたと言います。グラッツァーは、アカデミー賞受賞後まもなく死去。本作が遺作となりました。

 病状の進行が忠実に描かれ、しかも患者本人の視点を中心とした本作は、家族で認知障害を来す疾患について話し合うきっかけとしても良い作品かもしれません。

(c)2014BSM Studio.All Rights Reserved.

『アリスのままで』
2015年6月27日(土)公開
新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー

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日経メディカル Online編集部の「Cadetto.jp担当」約2名(飛び入りあり)が、時に熱く時にまったりとつづるコーナー。取材のこぼれネタや企画の予告編、耳よりなイベント、面白い人&面白い話、編集部の秘密、困っていることや皆さまへのお願いなどなど、自由度高め、文章短めで参ります。時には「病院ランチ食べ歩き」などの特別企画に変身することも。

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