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DDDDD〜ディーゴ〜

Episode 2 すっぱいぶどう(最終話)
彼女は「知ってしまった」

2016/10/31
尾崎晋平

 廊下を歩いていると、白石さんにばったり出くわした。白石さんは週末、自分を含め看護師同期5人で留置所に面会に行ったそうだ。カンファレンス室での告白から既に数日がたち、角野さんは落ち着きを取り戻していた。そして、ポツポツと動機について語り始めたという。
 やはり、急変時に動けないということは集中治療室時代から角野さんのコンプレックスだった。白石さんのように、1年目からテキパキ動ける人がいる中で、自分だけが何もできない。コンプレックスから何度も体調を崩して、仕事も休みがちになってしまった。配置転換の希望が通って、今年の4月から病棟勤務になったのだが、よりによって急変の多い循環器病棟勤務。そんなとき、インスリンを投与する方法を知ってしまった角野さんは、ついに人為的に院内急変を作り上げるという犯罪に手を染めてしまった。

「インスリンを投与する方法を『知ってしまった』ってどういうことですか?」
 ジョージが白石さんに尋ねる。白石さんは、「それなんだけどね」と、やや戸惑った表情で答える。
「角野さんのロッカーに、今回の犯行のトリックを詳しく説明した手紙が入ってたらしいの」
「本当ですか? 噂で聞いたけど、4月に事件を起こした岸田准教授も同じようなこと言っているらしいんですよね。『あんなメモ紙の言う通りになんてしなければ良かった』って。罪を軽くするための方便だろうってことになっているらしいけど…」
 事件を起こした2人が口をそろえる、「匿名の手紙」。それは本当に存在するのだろうか。もしそうだとしたら、やはり裏で糸を引いている人物がいるのか…。

 僕はそんなことを考えながら、その日の仕事を終えた。研修医室で着替えようとロッカーを開くと、紙が挟まっているのに気付いた。おそるおそる、その紙を開くと、そこに書いてあった文字に言葉を失った。

まだまだ続く
メディカルウォッチマン

 差出人には、2月末に、岸田准教授に届いたという手紙と同じ「メディカルウォッチマン」の文字――。全ての事件を裏で操っていた人物こそ、この手紙の差出人なのだ。僕は、数時間前まで疑っていた黒幕の人物の実在を、僕ははっきりと思い知った。誰が、何のために…。考えても全く答えの出ない問いが、頭の中を駆け巡った。

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著者プロフィール

尾崎晋平(ペンネーム)。循環器内科医。執筆活動以外にも、医療機器の開発や臨床研究、遠隔診療など、興味を持ったものにはなんでも挑戦。

連載の紹介

DDDDD~ディーゴ~
江戸大学病院で初期研修をスタートしたディーゴ、ジョージ、レイカの3人が、次々に事件に巻き込まれていく。先輩医師の助言やIT技術を駆使し、トリックを暴いていく医療ミステリー。

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