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DDDDD〜ディーゴ〜

Episode 1 ディーゴ誕生(第6話)
まさかの超お嬢様からの助け舟

2016/06/13
尾崎晋平

「ディーゴが作ればいいんじゃないの?」
 宮沢の一言で、僕は2年前の回想から引き戻された。みんなの顔がいっせいに僕の方を向く。レイカが不思議そうな顔をしている。そういえば、このメンバーで僕の特技を知らないのはレイカだけだ。
「ディーゴなら作れるだろ?」
 そう言いながら宮沢が両手を前に出して10本の指を素早く動かしている。どうやらキーボードを叩くしぐさのようだ。
「いや、僕はもう、プログラミングは2年以上やってないし…」
 自信なさげに答えると、
「大丈夫だって。あの頃みたいに眼鏡を掛ければ、若くしてIT業界の賞を総ナメにした天才ディーゴになれるだろ」
 宮沢はニヤニヤしながら自分の眼鏡を僕に掛けようとする。
「やめてくださいよ。僕はもう卒業したんです」
 宮沢の絡みを振り払いながら、僕は冷静に考える。
「正直、メッセージアプリなら以前作ったことがあるので今の僕でも簡単に作れます。でも、医療従事者限定にしないとダメでしょ? そこの仕組みが無理ですって」
「確かにな。医療従事者以外も自由にアクセスできるのはよくないな。患者さんの個人情報を扱うわけだし、何より回答の信用度が下がる」
 宮沢は、さっきまでの勢いが嘘のようにしょんぼりしてしまった。そこで入ってきたのはレイカだった。
「うちの会社のIDを使えばいいんじゃないかな?」
「うちの会社??」
 今度は、僕たち3人が不思議な顔をする番だった。
「うん、特に言ってなかったけど、うちの親、メディカルトップの創業者なの。私も取締役なんだ」
「ええーっ!」
 メディカルトップは、医療界で知らない人がいない医療系メディアの最大手企業だ。25万人の医師が登録していて、年商は500億円と言われている。レイカがそんな大会社の創業者の御令嬢だったとは初耳だ。麗しいのは見た目だけでなく、生粋の超お嬢様だったということか。
 それを聞き、宮沢のテンションが一気に上がる。
「よーし、条件はそろった。さっそく今から制作だ!」

(イラスト:持田 大輔)

 僕は研修医室に戻り、1度大きく深呼吸をしてノートパソコンの前に座る。そして、パソコンケースの奥から眼鏡を取り出す。2年間掛けていなかったためか、度なしのブルーライト遮断レンズは少しホコリがついている。
 医学部の5年生になるまではほとんど1日中掛けていた眼鏡で、プログラミングをするときには必須。この眼鏡を掛けると、普段の優柔不断な僕とは人が変わったように頭が冴え渡るのだ。
 ぎこちなかったのは最初の5分だけ。キーボードを叩き始めると、すぐに勘が戻ってきた。2年ぶりのプログラミングは、翌朝まで続いた。

※「DDDDD~ディーゴ~」は毎週月曜に掲載します。

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著者プロフィール

尾崎晋平(ペンネーム)。循環器内科医。執筆活動以外にも、医療機器の開発や臨床研究、遠隔診療など、興味を持ったものにはなんでも挑戦。

連載の紹介

DDDDD~ディーゴ~
江戸大学病院で初期研修をスタートしたディーゴ、ジョージ、レイカの3人が、次々に事件に巻き込まれていく。先輩医師の助言やIT技術を駆使し、トリックを暴いていく医療ミステリー。

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