胸水培養、抗菌薬の投与期間など、身近な問題に答えてくれる

お薦めの2本目は、お馴染みの日常業務である胸水培養の感度に関する論文6。「従来の方法では50%程度だった感度が、血液培養ボトルを使うと上がるということを検証したものです」(図4)。以前から、腹水などの培養で、血液培養ボトルを使うと感度が上がるという指摘はあったが、それをきちんと検証した論文はなかったという。「今まで感覚的にやっていたことの妥当性が証明された論文でした。不要な菌を拾い過ぎるという批判もありますが、感度が2割上がるというメリットは大きい。胸水採取の際のプラクティスが変わります」(倉井氏)。
図4 血液培養ボトルによる感度向上
肋膜炎患者57人から採取した胸水について、病院での従来型の培養に比べ、新たな病原体をどれだけ検出できたかを示した。
(論文6) Thorax 2011;66:658-62.より改編引用

「抗菌薬はいつまで続けたら?」─。そんな疑問を抱く研修医に手渡しているのがこの論文7。「レビューですが、抗菌薬の投与期間についての考え方を分かりやすくまとめてあるだけでなく、現在の考え方に至るまでの変遷も書かれています。医師なら誰でも抗菌薬を使う場面がありますので、ぜひ読んでほしいですね」。読後は、研修医の質問も、「どうしましょう?」から「こうしたらどうでしょう?」にレベルアップするそうだ。
最後に挙げたのがAnnals of Surgeryに掲載された論文8。「中心静脈カテーテルを挿入する際には、マキシマルバリアプリコーション(患者を覆う大型の敷布、滅菌手袋、滅菌ガウン、マスク、キャップ)が必要」という“常識”に対し、小さな敷布と滅菌手袋だけでも感染率は変わらなかったと報告している。「対象が外科の患者さんだけであったり、症例数が少ないといった点でさらなる検討が必要ですが、“常識”を疑ってかかる、その心意気は、臨床医にとって大切だと思います」(倉井氏)。