教授の退官時期にも注意
研究留学のタイミングは、臨床医としてのキャリアを希望する場合、大学院在学中あるいは卒後すぐを薦める声が多い。期間が決められている以上、日本で研究手法を学んでからの方がすぐに研究に取りかかれることに加え、臨床に戻って時間が経つと研究に対する興味が薄くなりがちだからだ。
また、帰国後に現在所属する職場に戻る予定ならば、職場環境もタイミングを考える際の1つのポイントだ。

「研究留学ネット」のコンテンツをまとめた『研究留学術』(医歯薬出版社)。米国留学に絞り、渡航の手続きなどがまとめてあり、参考になる。
今年留学を予定している都内のある大学勤務医は、「教授の定年退官の2年前に帰国できるスケジュールにした」と話す。帰国後のポストを保証すると言われていても、それは現在の体制下でのこと。教授が代わればどうなるかは分からない。また、帰国後すぐに教授が退官するタイミングでは、留学で学んだことを職場に還元し、恩返しするのが難しくなる。
留学先を選べるならば、「新進気鋭でポスドクを4~5人抱える小さな研究室がオススメ」と話すのは、「研究留学ネット」(http://www.kenkyuu.net/)というWebサイトを開設する慶應大医学教育統轄センター専任講師で、米国ワシントン大に留学経験のある門川俊明氏。大きな研究室は、“大ボス”の下で実際に研究を行う複数の“中ボス”がいる。大ボスに指導してほしいと思っても、そのような研究室では中ボスの下に付くことになるからだ。
留学先は直接訪問して確認を
電話のインタビューだけで留学を決めるケースも少なくないが、“これ”という研究室を見つけたら、実際に先方を訪ねた方がいい。「研究室の施設や環境、一緒に働くことになる仲間を見て、合わないと思ったら、先方からの留学許可が出ていても別の研究室に変えた方がいい」(門川氏)。交通費は負担する必要があるが、滞在費については先方が負担してくれることも少なくないようだ。
「研究留学ネット」のアンケートによると、研究留学には、留学先から年間3万ドル程度の給与が出るケースが多い。だが、無給や日本での奨学金を条件とする例もあるほか、ニューヨークなど大きな都市で安全な地域に住もうとすると、日本以上に住居費がかかることもあり、留学前にある程度の貯金は必要になる。今回取材した医師の中には、家族が一緒の場合、「1000万円程度必要ではないか」という声もあった。

Isao Oshiro
日本学術振興会
総務部研究者
養成課長
「昨年度は765件の申請がありました。増減はありますが、近年は最終的に毎年約130~140人に助成しています」と日本学術振興会総務部研究者養成課長の大城功氏は話す。