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総合診療専攻医に対する「専攻医説明会・質疑応答の会」に出席して
専門医試験、議論の透明性、質の担保は?

2020/09/25
横田 雄也(岡山家庭医療センター)

 2020年9月20日、日本専門医機構による「2020年度第1回専攻医説明会・質疑応答の会」がオンライン開催されました。この会は、総合診療専門研修専攻医のみ参加できました。私、横田雄也も専攻医の一人として参加いたしましたので、その内容の一部と私自身が感じた部分も含めてリポートいたします。

 説明会・質疑応答という名前の通り、事前に受け付けていた質問に加え、当日に挙がった質問に、総合診療専門医検討委員会(以下、検討委員会)の先生が答えてくださるという形式でした。総合診療科と内科のダブルボードに関する質問やJ-OSLER登録に関するものなど、50近い質問に回答していただけました(挙がった質問とその回答の内容に関しては、後日専門医機構のホームページに掲載してくださるとのことです)。

専門医試験は2021年9月に2日間で

 専門医試験に関して、ついに情報が共有されました。総合診療専門医研修が始まって早2年。今年度で研修を修了する専攻医がいる中、専門医試験の内容が提示されていないままでした。下記の内容で、現在検討されているとのことです(表1)。

表1 現在検討されている専門医試験の内容
1.試験日程
(ア)2021年9月に2日間で実施(1日目筆記試験、2日目面接試験)
(イ)その他の日程
 (1) 2020年9月:ブループリント(出題割合)の公開  
 (2) 2021年4月:受験申請  
 (3) 2021年7~8月:受験申請結果通知  
 (4) 2021年12月:合格者発表

2.実施方法:筆記試験、面接試験
(ア)筆記試験出題数:250問  
 (1) 専門医共通10問  
 (2) 総合診療I・II 120問  
 (3) 内科80問  
 (4) 救急20問  
 (5) 小児科20問
(イ)面接試験(詳細は未定)

3.試験会場:東京(他の地方会場を設定するか否かは未定)

 加えて、専門医機構は、専門医試験内容に準拠した教科書を2020年12月に発刊する予定とのことです。

議論の透明性向上の一歩は?

著者の横田雄也氏

 これまでは、検討委員会での議論の内容が専攻医や指導医に見えづらく、また専攻医や指導医からの意見も置き去りになっている印象がありました。そこで今年6月、議論に透明性と専攻医・指導医がより発言できる機会を求めて、総合診療に関わる医師で署名活動も行って参りました(総合診療専門研修構築の議論に透明性を求める署名を始めました!)。

 現在、検討委員会の議論の内容については議事録でしか把握できない状況ですが、その更新スピードの向上や、研修に関する質問に対して、迅速に回答する体制を整えていくとのこと。そして、専攻医や指導医が意見を提出することのできる「専攻医・指導医部会」が発足されたとのことです。

 検討委員会自体に専攻医が参加できるようになったわけではありませんが、このような形で新たな部会ができたことは、大きな一歩であると感じました。

総合診療専門医としての質の担保は?

 経験省察研修録には、これまでの家庭医療専門研修(プライマリ・ケア連合学会)の形式を踏襲した「タイプA」と呼ばれるものと、大枠(総合診療の7つの資質・能力)を示して自律的な学修を促す「タイプB」と呼ばれるものがありました。そして2020年度研修開始の専攻医からは、タイプAは廃止され、タイプBに統一されることとなりました。

 このタイプBは、専攻医が7つの資質・能力(表2)に関して、自ら目標設定を行い、日常臨床での経験を省察し記録するものです。確かにこれまでのタイプAで挙げられていたエントリー項目がこの7つに集約される形になっていますが、単純計算でこれまで作成が求められていた14~20項目が7つに減少しています。

表2 総合診療の7つの資質・能力
 1.包括的統合アプローチ
 2.一般的な健康問題に対する診療能力
 3.患者中心の医療・ケア
 4.連携重視のマネジメント
 5.地域包括ケアを含む地域志向アプローチ
 6.公益に資する職業規範
 7.多様な診療の場に対応する能力

 なぜタイプBに集約することとなったのか、なぜタイプAが廃止されることとなったのか──。質問をしてみたところ、「タイプAとタイプBには、求めているdimensionの違いがある。地域ごとに必要となる能力が異なり、目標設定も異なってくることから、専攻医がアメーバのように柔軟にそれぞれに目標設定しながら研修を行い、さらにはその目標設定自体が正しいのかどうか、批判的な視点も持つ自律性を重視し、タイプBに一本化することとなった」との回答がありました。

 回答を受けて改めて考えましたが、従来のタイプAでもそれぞれの専攻医が必要な目標設定を行って省察を行っていたとも思い、やはりタイプAが廃止になる理由にはならないように感じています。そして、私が一番疑問に思っているのが、専攻医それぞれが設定した目標を達成できていれば良しとする基準は、総合診療医としての専攻医の質を担保できるのかどうか、という点です。どのように経験省察研修録が評価されるのか、その基準や評価方法がいまだに明示されていないことから、今後明確化されることが期待されます。

 専攻医の自律した学修の促進については同意できますが、総合診療専門研修を終えた専攻医が胸を張って専門医になることができるのか、専門医としての質の担保については、今後も議論が必要であると感じます。

 以上、大きく3つの内容を取り上げました。全体的な印象として、検討委員会の先生が専攻医と対話をしようとしてくださる姿勢が見えました。そして、これまでの風通しの悪い状況から変化しようとする雰囲気も感じました。今後も「専攻医説明会・質疑応答の会」を定期的に開催してくださるとのことです。専攻医が自らの研修の質をより高めていくために、これからも建設的な議論を行っていければと思います。

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Cadetto.jpにレポートをお送りいただいた全国の若手医師や医学生たち。経験を発信したい皆さまからの寄稿をお待ちしております。

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