自ら作り上げないといけないキャリアパス

 また、キャリアパスの多様性が総合診療の強みであるのに、多様であるがゆえに、とらえどころのなさや分かりにくさが生じています。これも、総合診療の道へ進むことのハードルを高めている原因なのではないかと思いました。可能性を多く秘めている領域ではありますが、決められたレールがなく自由であるために、キャリアパスをそれぞれが自分自身で一から作り上げていかないといけない状況になっています。

 私は、医学生や研修医に向けて総合診療医としてのキャリア選択に必要な情報を発信している「総合診療医という選択2)を参考にしています。日本プライマリ・ケア連合学会が運営しているウェブサイトで、情報にアクセスしやすく、総合診療の説明や総合診療医のキャリアパスを提示しています。自分のキャリアパスを描く際の判断材料になりますので、ご覧になってください。

 必ずしも総合診療に興味がある人が、自ら道を切り開いていく情熱とパワーを持った人とは限りません。総合診療へ興味を持ちながらも悩める医学生・研修医に対して、総合診療専門研修の先にあるキャリアパスを具体的に提示することが重要であると思います。

 ところが残念ながら、現時点での総合診療専門研修プログラムは、総合診療医像を明確に描くことができていません。また研修医の側からすれば、一定レベルの能力を身に付けることを担保できていることが見えにくく、総合診療専門医となった後のキャリアが示されていないことも不安要因になると感じます。「総合診療医を増やしたい」という目的の下、専門医の質を担保するために始まった総合診療専門研修であるにもかかわらず、先行きが不透明でリスクが高いように感じるプログラムでは、自ら進んで選択する研修医は少ないと思います。ともすれば、研修プログラムの指導医側も不安に感じている様子が見て取れ、なおさら専攻しようと考える研修医は少なくなるはずです。

安心して総合診療を志すことのできる専門研修プログラムへ

 好き好んでフロンティアに飛び込んでいこうとする変わり者や、チャレンジャーしか選ばない(選べない)ような専門研修プログラムでは、国が掲げる総合診療医の拡充は難しいでしょう。総合診療の道に進もうと考える若手医師が、大きな不安を抱えることなく、総合診療専門研修プログラムに進もうと思えるようなプログラムである必要があります。そのためには、研修プログラムに進むことで得られる経験や技術、専門医となった後のキャリアパスを明確に示す必要があります。これらが十分に示されることによって初めて、門戸の広い専門研修プログラムとして総合診療科を拡充していけるのではないでしょうか。

 まだ専門医制度として走り出したばかりの状態なので不安定な要素はあるかと思いますが、何より一番不安に感じているのは、当事者である若手医師です。私たち若手医師が少しでも声をあげることは、小さいようで大きな意味があるのではないでしょうか。

■参考記事

1)加納亜子.「特集◎走り出した新専門医制度《プロローグ》 新専門医制度、期待と不安の中で8400人が船出
2)一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会。「総合診療医という選択