横田雄也(よこたゆうや)氏:2017年、岡山大学医学部卒。岡山協立病院での初期研修を経て岡山大学病院総合内科・総合診療科に。総合診療専門研修プログラムを専攻。日本プライマリ・ケア連合学会所属で、中四国若手医師フェデレーション副代表を務める。第1回レジデンピック優勝チームのメンバーでもある。

 私は卒後3年目の医師です。学生時代から、患者を総合的に診療できるジェネラリストに憧れておりました。そして地域に根ざした中小規模病院で初期研修を行い、全人的に患者を診療する「総合診療医」になりたいと思いました。そこで、2019年度より日本専門医機構の総合診療専門研修プログラムで研修を始めております。

 総合診療専門研修プログラムでは、訪問診療や継続外来診療、総合診療部門を有する病院での病棟診療を行い、さらに救急科と小児科をローテートすることとなっています。臓器横断的に、地域のあらゆる患者を多角的に診療できる医師となることが目標とされています。私は将来、地域の中小規模病院で病棟医として働きながら家庭医療を実践し、地域のコミュニティ形成にも関わっていけるような総合診療医になりたいと考えております。

 しかし、総合診療専門研修に進むことを決断するまでには、様々な不安や葛藤がありました。そして、総合診療に進もうと考えている同年代の研修医の声を聞いてみて、「もしかしたら、同じように不安を感じる研修医が多いのではないか」ということに気が付きました。また、実際に研修を始めるに至って、なぜ若手医師が総合診療専門医を選ばないのかが見えてきました。日々尽力して総合診療部門の運営に頑張っておられるベテラン指導医の先生からすれば的外れな意見かもしれませんが、一研修医の考えを発信させてください。

総合診療専門研修の選択は「ハードルが高い」

 結論から言うと、2018年度よりスタートした総合診療専門研修プログラムは、現時点では専攻を決断するにはハードルが高過ぎると、個人的には感じます。

 日本専門医機構による新専門医制度は、「専門医の質を高め、良質な医療が提供されること」を目的として創設されました。そして、世界に類をみない超高齢化社会に突入している日本の医療を支えていく上で、全人的に診療できる医師の必要性が強調され、専門医制度の19番目の基本領域として「総合診療科」が新設されました。紆余曲折を経て、ようやく2018年度より新専門医制度研修がスタートしました。ですが、新専門医制度で目玉とされた総合診療専門研修を始めた専攻医は、全国で184人という結果でした1)。今年度も150人余と低迷しています。「他の領域と異なり運営を専門医機構の直轄としたために制度設計が遅れ、総合診療医像を明確に描くことができず、専門医となった後のキャリアを示せなかったことなどが影響したとみられる」との指摘1)もあり、まさにその通りだと思いました。

 かくいう私も、日本専門医機構の研修プログラムの応募が始まる数カ月前まで、総合診療専門研修プログラムに進まずに1~2年間ほどはトランジショナル・イヤー(Transitional year:専門研修に入る前のインターン期間)として初期研修病院に残り、プログラムに縛られずに自由に研修を積むことも考えました。無理に、何かの専門研修プログラムに乗る必要もないと考えていたためです。また、専門医資格を持たずとも、実際にジェネラリストとして非常に高いレベルで診療されている先生方をこの目で多く見てきたという事実もあります。

 そんな私が、最終的に総合診療専門研修に進むことを決めた理由の1つは、自分がこの専門研修プログラムにチャレンジし、修了後に総合診療専門医となることで、その医師像やキャリアパスを後輩達に明確に示すことができるのではないか、と思ったことです。

 また、自分はある程度、自律的に自学自習し成長できるタイプの研修医であると、初期研修の経験から自己分析していたので、まだ総合診療専門研修を終えた先輩医師がいない中でも、一定のレベルまで成長できるのではないかとも考えました。

 総合診療専門医の資格を持っておくことのメリットも考えました。それは、自分のことを知らない第三者からみて、その医師がどのような研修を積んできたのかを客観的に示すことができる点が挙げられます。そして研修を積むことで、ある一定レベルの能力を身に付けられる点が、総合診療専門研修に進む利点の1つと思います。

 また、専門医の資格を取った先にある総合診療医のキャリアパスも考えてみました。一言でいうなら、総合診療医のキャリアパスは多彩です。役割も、その医師が置かれている環境によって様々です。急性期病棟においては、医学的な問題にフォーカスした対応が求められることが多くなります。一方、診療所などで診療にあたる場合には、医学的側面だけでなく心理・社会的側面からのアプローチも必要とされることが多いと思います。

 後者については「心理・社会的にと言う前に、まずは医学的な対応ができるようになるべき」との意見もあります。個人的には、どれを優先して身に付けるべきとかいう話ではなく、いずれの視点も並行して持ちながらそれぞれの技術を養っていくことが重要だと思います。そして、それは実際に可能だと思います。

 皆さんご存知の生物心理社会モデル (Bio Psycho Social:BPS)は、生物的側面、心理的側面、社会的側面という3つの視点から、患者さんに接していくことを求めています。全人的に診療できる医師を育てることを目的としている総合診療専門研修プログラムでは、この3つのどれかに偏ることなく、満遍なく研修することができます。このことが総合診療専門研修へ進むことのもう1つの利点ではないでしょうか。

 ただ現状は、こうした利点が分かりにくく、実際にプログラムとしての質が担保されているかどうかが不透明であることも問題であるように感じます。総合診療専門研修を選択する際の「ハードルが高い」と考える理由です。