日本の臨床研究現場を牽引する、2つの新たな取り組み
「Hungovercome(ハングオーバーカム)試験」には、2つの新たな取り組みが含まれています。1つが「医師が被験者」であることです。今回は、被験者、研究者はともに医師で、この臨床試験に参加する医師は、両方の立場の経験を積むことができます。海外では看護師や薬剤師、医師が被験者となるような試験が行われてきましたが日本では珍しい取り組みです。「医療の発展は研究に協力してくれる患者さんあってこそ」ということを再認識し、協力してくれる皆さんに改めて尊敬や感謝をする機会になってほしいと思っています。
また、若手医師の皆さんが将来、研究を主導する立場になった時、被験者になった経験があればこそ、患者さんにも説得力を持って研究協力の依頼が行えると考えています。
この試験では研究データを収集するシステム(EDC: electronic data capture)として、世界標準であり、使用プロジェクト数が圧倒的No.1の「REDCap」を使用しています。このシステムの使用経験の有無で、将来、共同研究に参加するハードルの高さが大きく変わってくると思います。世界標準の研究の流れを体験できることは、参加する医師にとってメリットの1つになるでしょう。
2つ目の新たな取り組みは、「クラウドファンディング」を活用して研究資金を集めていることです。前述の通り、国の科研費や製薬会社の寄付金は減少傾向にあります。「Hungovercome(ハングオーバーカム)試験」のような挑戦的な研究では寄付金や科研費の獲得はさらに難しいと考えました。
そこで、近年注目を集めているクラウドファンディングに挑戦することにしました。クラウドファンディングは、広く一般の人から資金を募る仕組みで、賛同したプロジェクトに金銭的な支援ができると同時に「支援者がそのプロジェクトの当事者になれる」ことが特徴です。臨床研究に関して広く知ってもらうことも目的の1つなので、より多くの人に「当事者」としてプロジェクトに参加してもらい、楽しんでもらえたらと考えたことも、クラウドファンディングで研究費を募るきっかけになりました。約330万円の費用のうち、180万円を日本臨床研究学会の運営費から、残り150万円をクラウドファンディングで募集しています。このプロジェクトが「寄付金や科研費がなくとも工夫次第で研究を行うことが可能だ」という前例になれば嬉しいです。
日本における臨床医学の発展を止めたくない
今回の研究で「二日酔いの症状に、ロキソニンが効くか?」が判明します。もし、二日酔いに効果があったら、世界初の二日酔い症状に効果のある薬剤のエビデンスとなるわけです。日経メディカルOnlineのアンケート調査で、二日酔いのときにロキソニンを服用したことがあると答えた17.1%の医師の「してやったり顔」が想像できますよね。反対に、もしも効果がなかったら、「今まで馬鹿なことしてたわ」と、笑い飛ばせます。そして、過剰にロキソニンの内服が行われている状態の是正にもつながります。結果がポジティブでもネガティブでも、どちらでも有意義なものになるのです。
また、参加する医師にとっては、研究者と被験者、両方の立場から一連の研究に携わる経験は、臨床研究のリテラシーを向上させるものになるでしょう。さらには、研究リテラシーの向上によって、患者さんが明らかにおかしい「ニセ医学」「トンデモ医療」の犠牲にならないようになればと考えています。

「Hungovercome(ハングオーバーカム)試験」は、その挑戦的な内容から、バカな医者が遊びで取り組んでいる試験のように見えるかもしれませんが、倫理的ルール、法的ルールにはきちんと従って、そして、多くの社会的な意義を考えた上で取り組んでいます。その根底にあるのは、「日本における臨床医学の発展を止めたくない」という強い気持ちです。そして、一般社会全体として、「新しい挑戦的な試みが受け入れられるような社会にしていきたい」という気持ちも、このプロジェクトには込められています。
最後になりましたが、もし研究に興味がある、という方は下記のエントリーフォームよりぜひ試験参加の申込みをお願いいたします。目標症例数は実際に二日酔いになって試験薬を服用する医師数が150名(ロキソニン群75人、プラセボ群75人)。達成した時点で試験を終了します。クラウドファンディングによる資金援助にも無理のない範囲でご参加いただければ幸いです。
▼プロジェクト紹介
■ Hungovercome(ハングオーバーカム)試験
■エントリーフォーム
■クラウドファンディング・FanFare
「ロキソニン(R)が二日酔いに効くか医者を被験者にして確かめたい!」