「先生、やりたいことを見つけるにはどうすればいいんですか?」

 相談者からいただく中でとりわけ多い質問です。前回、働く意味の把握や動機づけに直結する「内的キャリア」が重要だと説明しました。ただ、漫然と働いていても「内的キャリア」の開発はなかなか進みません。どのようなことを考えていったらいいのか、その補助線になるような概念を紹介したいと思います。

Whyから考えてみよう(ゴールデン・サークル)
 前回のポスト専門医キャリア迷子を構造的に説明するために良いモデルを紹介します。世界的なリーダーシップ学の権威であるサイモン・シネックの「ゴールデン・サークル」といいます1)。優れたリーダーの行動特性を示したモデルですが、個人のキャリアを考えていく上でも応用できるものです。端的に言うと、自分の行動原理を「Why」から考えよう、ということです。

 大事なのはWhyが主、Howは従であり、Whatはさらにその下位概念であること。このサークルの中心であるWhyの部分が、まさに個人の「内的キャリア」観であり、仕事のやり甲斐に直結するところです。事態をややこしくしているのは、この外側にあるHowの部分(「診療科選択」であるとか「専門医資格の取得」など)が、まるで夢や目標(=Why)のように感じられてしまうことです。

 「ポスト専門医キャリア迷子」の典型は、自分の中のWhyを追求することがないまま、あたかもWhyのように振る舞うHow(資格取得など)だけでキャリアを考えがむしゃらに突き進むというパターン。でも、手段は手段にすぎないわけで、6~7年目で一通り資格を取り終わったタイミングで、「あれ、私はこれを生かして何をしたいのだろう?」となるわけです。

 そもそも人間は「How」だけのために長くは頑張れません。生理学的にも「What」「How」を司っているのは外側の大脳新皮質ですが、「Why」を司るのは本能的に「何かをしたい!」というより強い欲求や情動を司る大脳辺縁系です。働くことそのものに対しての本能的なモチベーションを見つけることはとても重要なのです。

 そうは言っても、「やりたいこととかそんなにすぐ見つかんね~し」という声が聞こえてきそうです。自分なりのキャリア観を身につけるには社会に出てから数年くらいかかるとエドガー・シャインも言っています。私は冒頭の質問にはだいたい「本を読め、人と会え」と答えるようにしています。ここでのポイントは、いま自分がいる分野とはなるべく違う分野の本、人を選ぶことです。