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開始時期や接種対象を巡る自治体判断に振り回される介護現場
介護従事者のワクチン接種、ようやく本格化

 急ピッチで進む新型コロナウイルスワクチンの接種。医療従事者については、かなり進んできました。全国知事会は6月14日、徳島県と大分県で新型コロナウイルスワクチンの医療従事者への接種が完了したと発表しました。8日に発表した福井県(完了は4日付)を含めて、医療従事者の接種完了を報告した都道府県は計3県になりました。

 では、介護従事者は? 新型コロナワクチンの接種順位は(1)医療従事者等、(2)高齢者、(3)高齢者以外で基礎疾患を有する者、高齢者施設等の従事者、(4)それ以外の者──です(図1)。(2)高齢者と(3)高齢者施設等の従事者等の接種を同時並行で進めるかなどは自治体によって判断が異なり、ワクチンや打ち手確保、事務処理などの問題から、当面は「高齢者のみ」に限定している市町村もあります。

図1 新型コロナワクチンの接種順位
出典:第6回 新型コロナウイルスワクチンの接種体制確保に係る自治体向け説明会(2021年5月25日)資料 ※クリックで拡大します。

横浜市のグループホームなどで従事者の接種始まる

 取材先からは「6月に入って、高齢者施設等の従事者の接種がようやく本格化し始めた」という声が聞こえてきます。高齢者施設等においては、入居者などが重症化リスクの高い要介護高齢者が中心で、クラスター発生時には医療対応の弱さなどから被害が深刻化しやすいという特性があります。入居者はもちろん従事者の早期接種を進めていくことが、感染拡大防止の観点からも重要です。

 介護従事者のうち、医療機関と同一敷地内の介護老人保健施設や介護医療院の職員は、医療従事者に準ずる者として扱われ、比較的早くから入所者・従事者双方の接種が進んでいます。しかし、認知症高齢者グループホームや介護付き有料老人ホームなどの高齢者住宅では、入居者である高齢者の接種が進みつつある一方で、従事者の接種はまだこれから、という状況でした。

 川崎市と横浜市において、社会福祉法人ばなな園(川崎市中原区)と(株)アイ・ディ・エス(同)の2法人で計10カ所のグループホームを運営するバナナ園グループ代表の矢野達郎氏は「横浜市の1カ所の事業所で、6月11日と18日に2グループに分け、1回目の従事者接種が始まったところだ。川崎市の事業所の従事者接種は現在、予約を始めて日程調整中の段階で、市町村によって介護従事者の接種スケジュールなどには違いがある」と語ります(6月8日時点)。

 同グループの施設の入居者に関しては、6月初旬に10事業所のうち6事業所で1回目の接種が済み、全ての入居者について6月末から7月上旬までに2回の接種を終えられそうなめどが付いたとのこと。一方、従事者の接種は、横浜市の1事業所で接種が始まったばかりで、入居者の接種からやや遅れてスタートする形になりました。

 ただし、横浜市の場合、高齢者と施設等従事者が同時並行で接種を受けることを認めています。「万が一、副反応があった際のことなどを考えて、入居者と従事者の接種は分けた」(矢野氏)という施設側の配慮で、従事者の接種を少し後にずらしました。

 従事者用の接種券は、事前に接種予定の職員のリストを市に提出し、発行・送付してもらいました。接種予約については入居者・従事者ともに、接種実施医療機関のリストに掲載され、施設の近隣にある医療機関に管理者が電話し、施設に来訪してもらって接種してもらえるかを打診。応じてくれたクリニックに依頼して日程を決めました。

 従事者接種で先行する横浜市の1事業所ではワクチンの1バイアルで打てる6人分に合わせて、11日に12人、18日に6人の職員が接種する形で調整。余りとなる人は、接種を依頼しているクリニックの外来患者向け個別接種で端数が生じた際に電話で呼んでもらい、接種に行ったそうです。

サ高住や住宅型の併設事業所、居宅サービスの職員は? 異なる自治体判断

 複数の介護事業者や業界団体の話を総合すると、「介護従事者の接種については、接種開始時期や対象となる職員の範囲は自治体によってまちまちで、現場の管理者などが確認やスケジュール調整などに追われている」という実態が浮かび上がってきます。例えば、「高齢者施設等の従事者」という定義には本来、特別養護老人ホームや介護付き有老ホームの職員だけでなく、サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有老ホームなど、介護サービスを併設の訪問介護や通所介護事業所から提供する、いわゆる「外付け」型の高齢者住宅の職員も含まれます。しかし、一部の自治体では、外付け型の高齢者住宅の併設事業所の職員については対象外としているところもあります。

 また、一般の訪問介護や通所介護などの居宅サービス事業所の従事者については、厚生労働省の自治体向けの説明資料に「市町村の判断により、一定の居宅サービス事業所等および訪問系サービス事業所等の従事者も含まれる」とあります(図2)。ただしこれは、新型コロナの感染拡大の状況などを踏まえた上で、感染した要介護高齢者等が在宅療養などを余儀なくされる際、介護サービスを直接提供する居宅サービス事業所の職員については、自治体の判断に応じて施設等従事者の範囲に含めてよいという、かなり厳し目の条件が付いています。

 つまり、居宅サービス事業所の従事者は条件に該当しなければ、原則として(4)それ以外の者、と同様の扱いです。しかし、業界団体による「居宅サービス事業所の従事者も優先接種の対象に含めてほしい」という相次ぐ要望や、ワクチン接種体制の整備が進んできたことなどから、自治体の中には独自判断で居宅サービス事業所の従事者を優先接種の対象に含めるところも出てきました。例えば、福岡市では市内に勤務する訪問系・通所系の事業所等(介護・障害福祉含む)の従事者、保育士、教職員等を市の独自優先接種者として設定。高齢者が接種する時間が終わった後で、市の独自優先接種を実施しています。

図2 接種順位と対象者の範囲・規模
出典:第6回 新型コロナウイルスワクチンの接種体制確保に係る自治体向け説明会(2021年5月25日)資料 ※クリックで拡大します。

 第5波以降に備えるためにも、介護従事者の接種を円滑に進めることは重要です。介護事業者は入居者・利用者等の接種を進める一方で、自治体ごとに異なる従事者向け接種の開始時期や接種方法などをこまめに確認し、接種スケジュールや勤務シフトを調整する、といった対応が求められます。

 それにしても、ワクチンが足らなそうなときは後回しにされ、ワクチン確保の見通しが立ち、大規模接種会場の予約が低調になるや高齢者施設等の従事者なども対象に含めて「早く打ってほしい」と急かされるなど、「介護の扱いは少しぞんざいなのではないか」と思うのは私だけでしょうか。医療・介護の経営誌『日経ヘルスケア』では7月号(7月10日発行)において、医療・介護の新型コロナワクチン接種の最新事情や新型コロナ病床の確保に挑む医療機関の最新事例などについて取り上げる予定です。

2021年度介護報酬改定、通所サービスの新設加算をどう算定する?

 さて、日経ヘルスケア6月号では、特集「通所サービスはこう変わる!」で、通所介護や通所リハビリテーションの最新動向を取り上げました。自立支援と重度化防止の観点から、機能訓練・リハビリと口腔ケア、栄養マネジメントの一体的な取り組みが強調された今改定。これらの通所サービスは、2021年度介護報酬改定で加算類を中心に大きく見直されました。

 通所介護では単位数が10倍増になったADL維持等加算。算定要件が見直された入浴介助加算など、2021改定での変更内容にどう対応するかが重要になってきます。口腔機能向上・栄養改善を評価する加算類も再編されました。新設加算の中には、上位区分の算定などにおいてLIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出を求められるものもあります。

 本特集では、先進事業者がどのような工夫でLIFE対応を含めた新設加算の算定に乗り出しているのかなどを紹介しています(定期購読のご案内ページはこちら)。詳しくは日経ヘルスケア6月号をぜひご覧下さい。

日経ヘルスケア、7月号以降の記事ラインアップ

 ここで日経ヘルスケア2021年7月号以降のラインアップを少しご紹介します。
コロナ対応の“勝算”を探る コロナ患者や回復患者を受け入れる上での課題と解決策を先進事業者に学ぶ
ワクチン接種体制、現場の問題点と解消法 接種の円滑化・加速化に向けた現場の奮闘をリポート
開設広がるコロナ後遺症外来 感染者の増加に伴ってニーズも増大
医療・介護は「まちづくり」といかに関わるべきなのか? 医療・介護ニーズも大きく変化する将来を見据え、地域との関係性を深める方法を考える
どうなるオンライン診療 オンライン診療の最新動向と事例を多数紹介!
2021改定で脚光! 口腔・栄養・リハビリ最前線 先進事業者の取り組みに成功例を学ぶ
今どきの開業の傾向 今、開業するクリニックの勝算はどこにあるのか?
5年後を見据えた訪問看護ステーション 中重度対応などのポイントを解説!
科学的介護システム「LIFE」完全対応 データ提出の方法や注意点は?

          ※記事タイトル・内容、掲載時期が変わることもあります

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「日経ヘルスケア ビューアー」アプリ、好評です
定期購読者でなくても無料で過去のバックナンバーが読めるキャンペーン、6月30日まで!

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連載の紹介

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医療と介護の経営専門誌「日経ヘルスケア」は、行政動向に関する深い分析と徹底した現場取材を通じ、厳しい環境下で勝ち抜くためのマネジメント情報を提供しています。創刊は1989年。専門記者の手による記事は、開業医や病院長の先生方など2万人近い読者に支持していただいています。このブログでは、話題の経営トピックスを盛り込んだ最新号の内容を、ちょっとだけですがご紹介します。

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