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早期・中期・長期の視点で医療・介護ニーズの変化に対応を
コロナが突きつける「地域」と「国」の関係

 「コロナ禍が改めて突きつけているのは、『地域』と『国』の関係の在り方だ」と、最近つくづく思います。例えば新型コロナワクチンの接種体制を巡っては、政府は今年7月末までに高齢者向けの接種を完了させることを目指しています。しかし、人手確保などの面で「7月末までは難しい」とする地方自治体も少なくありません。

 「地域医療構想」や「地域包括ケアシステム」という名称が示すように、医療・介護の提供体制は、地域を主体として地域内の話し合いや連携で構築していくのが基本です。今後の医療・介護ニーズの変化の度合いは地域によって大きく異なります。「人口減少・高齢化」と言っても、高齢者人口の減少が見込まれる地域もあります(図1)。

図1 2045年における都道府県別の65歳以上人口の指数(2015年を100とした場合) ※クリックで拡大します

 厚生労働省の「保健医療2035」策定懇談会が2015年6月に公表した、2035年に向けた保健医療システムの在り方に関する報告書では、均質的なサービスを全国に行き渡らせる時代から、各地域・現場主導でサービスの質向上と効率化を目指す時代への転換を促しました。この延長線上に現在の医療・介護関連の施策の多くが位置付けられていると言えるでしょう。

地域主導は「スロースタート」だが、現場の改善が進めば巻き返しの期待も

 一方で、地域主導にはデメリットもあります。まず、地域内での合意形成や調整に相当の時間を要することが少なくありません。体制が固まるまで、どうしても時間がかかりがちで、「スロースタート」になりやすいのです。また各地で運営システムが異なり、デファクトスタンダードがないため部分最適ではあっても全体最適の面からは非効率的、といった問題も生まれやすくなります。

 この特性は、新型コロナの感染拡大のような危急の事態とは相性があまり良くありません。コロナ対応を巡っては、PCR等検査の体制整備から医療機関での新型コロナ患者の受け入れ、ワクチン接種に至るまで、とかく「遅い」という批判がなされます。構造的な理由の1つに、この地域主導という医療・介護提供体制の特性があるのではないかと思っています。

 スピードアップには、自治体の首長をはじめとした地域のリーダーが早期に体制をまとめ上げたり、中央政府が積極的に介入・支援するといった施策が考えられます。政府は今、後者の姿勢を強めています。ワクチン接種に関しては担当大臣を別に設けました。また7月末の接種完了という目標達成に向けて、総務省が中心となって自治体に働き掛けています。ここでは厚労省ではなく、総務省が「中央」の役割を担っているとも言えます。

 ただし、やはり地域のことは、地域の実情を最もよく分かっている当事者がベターと考える方法で実施するのが筋でしょう。地域・現場主導で改善を重ねていけば、スロースタートであっても巻き返しの余地は十分にあります。それをどう国がサポートするのか。地域主導か国主導かという二元論ではなく、コロナ禍を契機に両者の担当領域と関係性を見直し、明確化していくことが、今後の医療・介護提供体制の変革では重要になると見ています。

早期・中期・長期の3つの視点で地域密着を深化

 一方、個々の医療機関や介護事業者にとっては、コロナ禍は地域の提供体制が抱える問題や、今後の医療・介護ニーズの変化を前倒しで顕在化させた、とも言えます。地域を見据えながら、短期的にはコロナ禍による受診控え・利用控えなど、経営環境の変化に対応するとともに、長期的にはどれだけ地域に密着したサービスを提供できるかが重要になってきます。

 医療・介護の経営誌『日経ヘルスケア』では、5月号の特集「医療・介護ニーズの変化に備える!」で、早期・中期・長期という3つの視点から、経営・運営体制を見直している医療機関・介護事業者の動きについて紹介しています(定期購読のご案内ページはこちら)。

 早期的視点としては、医療機関であれば患者の状態に応じた病床管理の徹底、介護施設であれば入院率の抑制など現場業務の改善に着手することが求められます。中期的な視点としては、地域での役割や機能分化を念頭に置いた病棟構成への変更や診療体制の見直し、保険事業収入だけに頼らない保険外サービスの確立などが課題として挙げられます。

 そして長期的なゴールとしては、事業継続の最大の要素となる「地域との信頼関係の構築」が重要になってきます。地域住民の健康増進の取り組みによって、人口が減少する中でも実患者数が増えている医療機関の例など、地域で必要とされる事業者になるために知恵を絞っている先進事例を紹介しています。詳しくは日経ヘルスケア5月号をぜひご覧ください。

日経ヘルスケア、6月号以降の記事ラインアップ

 ここで日経ヘルスケア2021年6月号以降のラインアップを少しご紹介します。

大変動! 通所介護と通所リハビリ 2021年度介護報酬改定で大きく変わった通所サービス。先進事業者の勝算は?
イケてる事務職員の育成方法 有能な事務職員はどう育てる?
コロナ対応の“勝算”を探る コロナ患者や回復患者を受け入れる上での課題と解決策を先進事業者に学ぶ
ワクチン接種体制、現場の問題点と対処法 接種の円滑化・加速化に向けた現場の奮闘をリポート
開設広がるコロナ後遺症外来 感染者の増加に伴ってニーズも増大
今どきの開業の傾向 今、開業するクリニックの勝算はどこにあるのか?
2021年度介護報酬改定で脚光! 口腔・栄養・リハビリ最前線 先進事業者の取り組みに成功例を学ぶ
5年後を見据えた訪問看護ステーション 中重度対応などのポイントを解説!
科学的介護システム「LIFE」完全対応 データ提出の方法や注意点は?

          ※記事タイトル・内容、掲載時期が変わることもあります

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連載の紹介

日経ヘルスケアon the web
医療と介護の経営専門誌「日経ヘルスケア」は、行政動向に関する深い分析と徹底した現場取材を通じ、厳しい環境下で勝ち抜くためのマネジメント情報を提供しています。創刊は1989年。専門記者の手による記事は、開業医や病院長の先生方など2万人近い読者に支持していただいています。このブログでは、話題の経営トピックスを盛り込んだ最新号の内容を、ちょっとだけですがご紹介します。

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