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15人以上の人手をかけたのに、診療報酬は5万円?
新型コロナで医療機関から収入減の悲鳴
COVID-19疑い患者の外来診療は非効率的で“割に合わない”

2020/06/19

 「この収入の落ち込みが続けば、多くの医療機関は立ち行かなくなる。COVID-19の後には回復不能な医療崩壊が確実に続いている」――。全国医師ユニオンが5月16日に開催した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する緊急シンポジウムで、東京保健生活協同組合大泉生協病院(東京都練馬区)院長の齋藤文洋氏は、現在の経営の苦しさをこう表現しました。

 同院は94床(一般47床、地域包括ケア47床)の一般病院で、東京都指定二次救急医療機関です。同院の1カ月の医業収益は1億4000万円前後。3月は10%弱、4月は10%を超える減収でした。外来や入院の患者減少に加えて、3月から休止した検診・健診も影響しています。

 医療・介護の経営誌『日経ヘルスケア』は、6月号特集「新型コロナ、第2波に備える」で、COVID-19の第1波への対応で見えた課題を整理するとともに、経営が切迫する医療機関・介護事業者の状況をリポートしました。(定期購読のご案内ページはこちら

COVID-19疑い患者の外来診療は人手も手間もかかる

 同院がCOVID-19の感染拡大で直面した課題には表1のようなものがあります。とりわけ大きかった問題は、COVID-19疑い患者の外来診療が経営的には非常に効率が悪く、サポートすべき診療報酬や予算上の措置がほとんどないことでした。

 同院は3月3日に発熱外来を開設。「COVID-19疑いの患者にはCTなどの検査を積極的に行っているが、発熱外来の収入はどんなに頑張っても増えない」と齋藤氏は語ります。COVID-19疑いの患者を診察すれば、「院内トリアージ実施料」(1回300点)は算定できますが、人手と時間がかかる上に、感染対策のための医療材料費などがかさむ分をとても補えません。

表1 COVID-19感染が続く中の課題
出典:5月16日全国医師ユニオン緊急シンポジウムにおける斎藤氏の発表スライドより引用

 例えば、保健所からの紹介で、発症から1週間という45歳男性が来院。すぐにCTを撮影したところ、COVID-19に特徴的な所見が認められ、PCR検査の検体も採取しました。当の男性は「ちょっと苦しい」と語る程度で、咳もあまりなかったといいます。

 医師らはCT画像を見た瞬間、COVID-19を確信しましたが、PCR検査の結果が出ない段階では、あくまで「COVID-19疑い」です。入院先探しは難航し、何とか入院先が見つかったのは来院から8時間半後。5時間も電話をかけ続けた医師5人を含めて、この患者には15人以上が関わりました。一方、得られた診療報酬収入は5万1090円でした。

 「COVID-19疑い患者の診療報酬は3~5倍ないと採算が合わない」と齋藤氏。「COVID-19診療の本当の前線は外来であり、そこにきちんと手当てをすれば、中等症、重症のトリアージにもつながる。医療崩壊を防ぐことができる」と訴えます。

もし患者が減った状態が「ニューノーマル」になったら?

 もちろん厚生労働省も手をこまぬいてはいません。5月26日の「新型コロナウイルス感染症にかかる診療報酬上の臨時的な取り扱いについて(その19)」では、重症・中等症のCOVID-19患者に対する診療報酬上の評価が3倍に拡充されました(図1)。救命救急入院料1の「3日以内の期間」は通常は1万223点ですが、特例的に3倍の3万669点に引き上げられました。またCOVID-19の疑似症として入院措置がなされている期間については、今般のCOVID-19患者に対する特例的な取り扱いの対象となることが明確化されました。

 政府は5月27日、COVID-19の感染拡大を受けて第2次補正予算案を閣議決定しました。厚生労働省関係の予算総額は4兆 9733億円で、そのうち2兆7179億円を「ウイルスとの長期戦を戦い抜くための医療・福祉の提供体制の確保」に充てています。「COVID-19緊急包括支援交付金の抜本的拡充」には2兆2370億円を確保し、医療・介護従事者に最大20万円の慰労金を支給するほか、COVID-19患者専用の病院や病棟を設ける医療機関への支援、感染症対策を徹底した介護サービスの提供に必要な経費などに充当する計画です。

図1 新型コロナウイルス感染症患者の受け入れにかかる特例的な対応
出典:第459回中央社会保険医療協議会総会(2020年5月25日)資料

 しかし、まだ上に挙げたようなCOVID-19疑い患者の外来診療に対するサポートなどについては、必ずしも十分とはいえない状況です。COVID-19感染拡大以降の医療機関の苦境は、様々な調査でも明らかになっています。そして、もし患者が減った状態が当たり前となり、「ニューノーマル」になった場合、医療機関の経営に与える影響はさらに長期化・深刻化することが予想されます。確かに国内ではCOVID-19の第1波は収束に向かいつつありますが、第2波の到来までに準備しておくことは山積していると思われます。

 このほか、医療・介護における最新のクラスターの発生状況などもまとめています(関連記事はこちら)。

 詳しくは日経ヘルスケア6月号をぜひご覧ください。

日経ヘルスケアは今後、こんな記事をお届けします

 ここで日経ヘルスケア2020年7月号以降のラインアップを少しご紹介します。

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