宿日直許可基準や医師の研さんに関する新しい通知、応召義務の法的解釈、厚労省の新検討会の開催──。2024年4月に適用される医師の時間外労働規制に向けて、国は矢継ぎ早に施策を打ち出しています。医療・介護の経営誌『日経ヘルスケア』8月号特集「病院経営を揺るがす働き方改革」から、最新動向の一部を紹介します。


 3月末に厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」は、2024年度から導入する医師の時間外労働規制の枠組みを決定した。それから約4カ月の間、厚労省はスムーズな制度導入のため、具体的な仕組みの詰めなどを進めてきた(図1)。

 以下では、病院経営に影響を及ぼす(1)新しい宿日直許可基準、(2)医師の研さんの扱い、(3)応召義務の解釈、(4)「医師の働き方」後継検討会の発足、(5)大学病院医師の副業・兼業――の五つのトピックスのうち、70年ぶりに変更された(1)宿日直許可基準の最新動向を紹介しよう。

図1 2019年3月以降の「医師の働き方改革」に関連する主な経緯(編集部作成)
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新しい宿日直許可基準
従来より緩和、診療科別などでも「許可が可能」と明示

 病院経営に最も大きな影響があるトピックは、70年ぶりに改められた宿日直許可基準だろう。7月1日に基発0701第8号「医師、看護師等の宿日直許可基準について」の通知(表1)が発出され、従来の基準(1949年に通知発出)よりも大幅に緩和された。

 そもそも宿日直は、夜間・休日に医療従事者が何らかの業務のために医療機関に滞在することを指す。「労働密度がまばらで夜間であれば十分睡眠を取り得る」宿日直で、労働基準監督署長の許可を受けていれば、労働時間に算入しなくて済む。例えば、17時半~翌朝8時半の滞在に対して宿日直許可を受けていれば、その間の15時間は労働時間規制の対象から除外できる。一方、宿日直許可がなければ労働時間として扱われ、15時間について割増賃金(25~50%の割増)を支払わなければならない。

表1 医師、看護師等の宿日直許可基準に関する新しい通知の概要(編集部作成)
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 従来の基準では、宿日直中に行ってもよい「特殊の措置を必要としない軽度、短時間の業務」は、「病室の定時巡回、少数の要注意患者の定時検脈、検温」などとされていた。それが新しい基準では、「少数の要注意患者の状態変動に対応するための問診による診察等(軽度の処置を含む)」などとされ、少々の診療なら認められるようになった(表1)。全日本病院協会会長の猪口雄二氏は、「以前は少しでも業務があれば宿日直許可が下りなかったが、新しい基準はかなり緩和された」と評価する。

 さらに新しい通知では、診療科や職種、時間帯などを分けて宿日直の許可を受けることが可能だと明記された。日本病院会副会長の岡留健一郎氏も新しい通知を評価し、「今後は、どの診療科が何曜日に忙しいか、深夜に業務がどのくらい発生しているかなど、医師それぞれの労働実態を細かく把握した上で、自院に適した体制を構築することが大切だ」と指摘する。

図2 新しい宿日直許可基準のイメージ(医師の場合、編集部作成)
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 例えば、病院内でも救急外来担当医と病棟当直医に分けて、夜間・休日の業務量が多い救急外来担当医は通常の勤務とし、病棟当直医の夜間・休日の当直については宿日直の許可を受けるといった方法がある(図2)。


 冒頭に挙げた5つのトピックスのうち、残りの4つについては日経ヘルスケア8月号で読めます。ご興味があれば、定期購読のご案内ページをご覧ください。

 また日経ヘルスケアでは、「医師の働き方改革」が求められる社会的背景から労働関連法規、院内での取り組みのポイント、実際の取り組み例、助成金・補助金の活用法まで幅広く解説した書籍『医師の働き方改革大全』を2019年6月末に発行しました。厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」の構成員である裴英洙氏の監修の下、病院経営者や弁護士、社会保険労務士、人材コンサルタントなど総勢18人の専門家が各専門分野の執筆を担当しています。ぜひお役立てください。