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虎、五輪開催で懸念される第5波に備える

2021/06/28

 東京五輪の開催が決まった。九州人からしても、隣の島で自殺行為とすら言えるお祭りが開かれるとなると、「知りません」では済まされない。熊本県庁、熊本市役所、熊本県警などに務める私の知人も、ワクチンを打てないまま応援に駆り出されるようだ。当然、その中からウイルスを持ち帰るケースも出てくるだろう。

 そうなれば、五輪の後に大小なりとも第5波が来る。五輪で第5波とは皮肉なものだ。そんなことはさておき、医療側としては、さらなる対策を講じなければいけない。再び病床がひっ迫して患者が受け入れられない事態にならぬよう、日本病院会熊本県支部長としても何か始めなければ……。少なくとも今までのような体制ではいけないだろう。

 そこで日本病院会熊本県支部では5月末、熊本市内の民間病院にアンケート調査を実施した。基幹病院と民間病院の連携強化に向け、有事の際、どの基幹病院との連携を望むか、各民間病院の病院長に広くアンケート調査しようと考えたのだ。全体像を調査するため、日本病院会所属の病院だけでなく全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会所属の民間病院すべてにアンケートを送ることにした。

 調査開始前、一応日本病院会熊本県支部の役員会で趣旨を説明した。日本病院会所属の病院以外にもアンケートを送ることに、若干の反対意見も出たが、「アンケートを実施したことで、何らかの批判が出てくれば責任は私が取ります。すぐに支部長やめますから」と説明して承諾された。支部長という役職は、もともと自分には向いていない。いつでも辞める覚悟はできている。

 回答率が60%程度あれば御の字だと思っていたが、結果は違った。全体の回答率は83%(71件/85件)に上り、所属団体別でも日本病院会96%、全日病91%、医療法人協会98%と高かった。

 そして結果を分析してみると、地域別に各民間病院が有事の際の連携病院を偏りなく選択しており、うまく分散化ができていた。加えて、それぞれの民間病院の病院長が、有事には、平時の連携とはまた別の医療体制の必要性をご理解されていることも示唆された。

 これを基に、熊本市だけでなく県全体の連携体制に拡大しなければならない。その上で病床確保に向け、行政や医師会と協議しながら基幹病院と民間病院による連携体制を構築し、有事への対応に繋げていければと考えている。

 これはまだまだ第1歩であることは間違いない。ただ、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による大混乱を契機に、有事でも医療崩壊などを起こさないため、できることは何でもしなければならない。そしてそれが、医療だけでなく社会経済にとっても救済となるはずだ。

 幾度となく災害を乗り越えてきた熊本である。再び地震に見舞われようと、南海トラフが来て他県から応援要請があろうとも、不撓不屈の精神で有事に強い組織作りを目指していきたい。そして誰からも文句を言われずに、夜の街を謳歌したい。って、これはあまりカッコよくないか……。

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著者プロフィール

東謙二(医療法人東陽会・東病院理事長兼院長)●あずま けんじ氏。1993年久留米大卒。94年熊本大学医学部第2外科。熊本地域医療センター外科などを経て、2000年東病院副院長。03年より現職。

連載の紹介

東謙二の「“虎”の病院経営日記」
急性期の大病院がひしめく熊本市で、63床の病院を経営する東謙二氏。熊本市の若手開業医たちのリーダー的存在でもある東氏が、病院経営や医師仲間たちとの交流などについて、ざっくばらんに語ります。
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 本連載、「東謙二の“虎”の病院経営日記」が1冊の本になりました。約10年間の掲載からよりぬきの回を「病院経営」「連携・救急」「医療の話」「ひと・酒」の4テーマに分け収録。書き下ろし「中小病院が生き残るための15箇条」の章は、「敵対より連携」「コバンザメ医療経営のススメ」「中小病院の生きる道」「2代目は本当にだめか」「同族経営と事業承継」……など、民間医療機関の経営者には必読の内容となっています。
(東謙二著、日経メディカル開発、2700円+税)

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