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虎の病院に届いた医療従事者への感謝の言葉

2020/06/30

 「自粛解除」と言われても、コロナ禍前のようには暮らせない。第2波に備えながら、自己防衛しなければならない。精神的にも肉体的にも、コロナ疲れが出てきた。実体経済と同様、病院も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で診療離れがあり、外来・入院ともに患者が減少し、収益も落ち込んでいる。しかし、こんな時だからこそできることがあるはずだ。何か、ちょっとでもいいことあれば、うれしいものである。

 実際、阪神タイガースがやってくれた。日本高等学校野球連盟に加盟する野球部の3年生部員全員に、「甲子園の土」の入ったキーホルダーを贈呈することを決めたのだ。

 私がいいなと思ったのは、硬式だけでなく軟式の野球部も贈呈の対象にした点だ。さらにその後、女子野球部の3年生部員にもキーホルダーが贈呈されることになった。甲子園を目指していた3年生球児にとっては、現時点では「こんなもの」程度かもしれない。しかし、将来このキーホルダーは、あらゆる野球部員にとって、「102回甲子園で優勝していたかもしれない」という証になる。

 野球部にばかりとの批判も出ている。私も高校では陸上ホッケーという超マイナースポーツに勤しんでおり、熊本代表として国体、インターハイに出場したが、COVID-19が無くてもほぼ無観客試合であった。だからこそ、批判する気持ちは分からないでもない。ただ、こんな時だからこそ、小さな善意も必要ではないだろうかと思うのだ。

 大きい善意としては先日、都心でブルーインパルスの感謝飛行があった。今回は、都心でCOVID-19の重症者の診療に当たった病院や、院内感染で大変だった病院の真上を飛行するなど、結構練られたルート設定になっていたようだ。ニュースの映像を見ながら、熊本地震後に来てくれたブルーインパルスの復興支援飛行を思い出した。一瞬で、熊本県民の心をあれほど癒してくれるものは他になかった。晴天の空を、ブルーインパルスが轟音と共にアクロバティックに舞う姿を見て、涙を流した人も少なくなかった。

 私も、自粛要請が解除された後、時折食事には出かけるようにしている。「ただ飲みに行きたいだけだろう」との批判を受けながらも、行きつけの店だけを順次回っている。どこの店も、客の戻りは鈍く、経営難である。医療従事者ということもあり、一応、2次会は自粛している。私ができる支援といえば、この程度にすぎない。しかし、批判されるのも覚悟の上で、ちょっとでもいいから自分のできる範囲でやれることをやるべきだと思っている。

 先日、個人的にとてもうれしいことがあった。病院併設の介護老人保健施設田迎ケアセンターの職員に、熊本発女子バレーボールのプロチーム、「フォレストリーヴズ熊本」に所属している大木美沙季選手、入江彩水選手の2人がいるのだが、チームメイトから病院と老健施設に向けて応援メッセージを頂いたのだ。

 職員みんなで一緒に見たが、やはり嬉しいものである。医療従事者も、日ごろはここまで直接、感謝の言葉を聞くことはないので、第2波が来ても頑張らなくてはと思った。災害が起きるたび、様々な支援活動をしている杉良太郎が、マスコミからの「売名行為だ」との批判に対して言い放った言葉がある。

 「そう、俺は売名行為で支援をやっている。それでいいだろう。支援しないより、売名行為でも支援するほうがいいに決まっている」

 本当に助け合いの精神であらゆる支援を続けている杉良太郎だからこそ言える言葉である。やはりカッコいい。

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著者プロフィール

東謙二(医療法人東陽会・東病院理事長兼院長)●あずま けんじ氏。1993年久留米大卒。94年熊本大学医学部第2外科。熊本地域医療センター外科などを経て、2000年東病院副院長。03年より現職。

連載の紹介

東謙二の「“虎”の病院経営日記」
急性期の大病院がひしめく熊本市で、63床の病院を経営する東謙二氏。熊本市の若手開業医たちのリーダー的存在でもある東氏が、病院経営や医師仲間たちとの交流などについて、ざっくばらんに語ります。
この連載が本になりました!
『“虎”の病院経営日記 コバンザメ医療経営のススメ』
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 本連載、「東謙二の“虎”の病院経営日記」が1冊の本になりました。約10年間の掲載からよりぬきの回を「病院経営」「連携・救急」「医療の話」「ひと・酒」の4テーマに分け収録。書き下ろし「中小病院が生き残るための15箇条」の章は、「敵対より連携」「コバンザメ医療経営のススメ」「中小病院の生きる道」「2代目は本当にだめか」「同族経営と事業承継」……など、民間医療機関の経営者には必読の内容となっています。
(東謙二著、日経メディカル開発、2700円+税)

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