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第15回
新型コロナ「3つの感染症」から働く仲間を守る

2020/05/20
久持修(やまき心理臨床オフィス代表・臨床心理士)

 前回は、「働きがいのなさ」をテーマに、働きがいを仲間に広めていくために「仲間との連帯感」を作り上げる方法についてご紹介しました。

 今回は、予定を変更し、現在、猛威をふるっている「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」影響下において、働く仲間をどうしたら楽にできるのかについて考えてみたいと思います。

 まず、このテーマで書くに当たって、最初にお伝えしたいことがあります。読者の皆さんには、新型コロナウイルス感染者と直接関わっている方のみならず、感染者を受け入れている医療機関に勤務している方、今後、患者の中に感染者が出てくる可能性がある医療機関に勤務している方を含め、恐らく新型コロナウイルスと最前線で闘っていらっしゃる方が多いのではないかと思います。

 中には自分自身の感染リスクに恐怖を感じたり、また自身が感染することにより職場や大切な家族に迷惑を掛けてしまうことを不安に感じたりしている方もいらっしゃると思います。

 それでも、専門職としての使命を全うする姿勢に敬意を表しつつ、「私たちのために闘ってくださり、ありがとうございます」と感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

ご存じですか? 日本赤十字社の「サポートガイド」

 さて、今回は、新型コロナウイルス感染症の影響下において、働く仲間を楽にするための資料をご紹介したいと思います。

 現在、日本赤十字社より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応する職員のためのサポートガイドがインターネットで公開されており、非常に有益な情報が簡潔にまとめられています。

 このサポートガイドでは、新型コロナウイルス感染症が流行している中、医療関係者の心理・社会的影響を軽減し、職員・家族の尊厳と健康を守ることを目的に、感染症がもたらす影響、ストレス反応、心の健康を維持するために必要なこと、感染者と関わる職員と家族をサポートする方法について情報を提供しています。

 詳細はぜひ、そちらをご覧いただけたらと思いますが、今回はそこに書かれてある内容の一部をダイジェストでお伝えしつつ、そこから考えられる具体的なメンテナンス方法について書いてみたいと思います。

新型コロナウイルスがもたらす「3つの感染症」

 この資料では、新型コロナウイルスがもたらす影響には「3つの感染症」があるとしています()。

 第1の感染症は「生物学的感染症」であり、これはウイルスによって引き起こされる疾病そのものです。

 第2の感染症は「心理的感染症」です。ウイルスは目に見えず、治療法も確立されていないことから、不安や恐怖を引き起こします。例えば、ニュースや人との会話の中で、有名人の方が亡くなった話や身近な場所で感染者が確認された話などを耳にすると、私たちの心の中には不安や恐怖が増大していくことになります。

 そして、その不安や恐怖を抱えた状態で人と関わることによって、相手にも不安や恐怖を引き起こしてしまうのです。

 第3の感染症は「社会的感染症」であり、不安や恐怖から嫌悪・差別・偏見が引き起こされます。例えば、感染に対する不安が高まることで、道を歩いている人がマスクを着用していないことに嫌悪感を抱いたり、医療機関に勤務しているという理由で職員の子どもが保育園の通園を拒否されるという差別につながったり、「〇〇病院の職員はコロナウイルスに感染している」という偏見の目で見られたりします。

 結果、「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」という言葉で表現されるように、感染を予防するために人との距離を取るようになるだけでなく、「嫌悪・差別・偏見」などにより、人間同士の絆が「分断」されてしまうのです。

 つまり、新型コロナウイルス感染症は、人同士の「身体」と「心」を分断するという影響をも及ぼしているといえるのです。

表 新型コロナウイルスがもたらす「3つの感染症」

第1の感染症(生物学的感染症)
 ウイルスによって引き起こされる「疾病」そのもの
第2の感染症(心理的感染症)
 見えないこと、治療法が確立されていないことによって引き起こされる「不安や恐怖」
第3の感染症(社会的感染症)
 不安や恐怖から引き起こされる「嫌悪・差別・偏見」

「身体は遠くても心は近くに」

 次に、このような傾向を理解した上で、働く仲間を楽にするメンテナンス方法について考えてみましょう。

 ポイントは、「身体は遠くても心は近くに」ということです。

 新型コロナウイルスそのものに感染しないために身体的距離を取ることは必要不可欠ですが、心は近くにいてよいはずです。心の距離が離れないように、あるいはもっと近付けるようにメンテナンスを心掛けてみましょう。

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著者プロフィール

久持修(やまき心理臨床オフィス代表)●ひさもち おさむ氏。臨床心理士。東京学芸大学教育学部卒業後、秋田大学大学院教育学研究科で臨床心理学を専攻する。長信田の森心療クリニックなどを経て現職。医療法人社団東京愛成会高月病院、多摩養育園、お茶の水女子大学非常勤講師、日本ブリーフサイコセラピー学会常任理事、日本トータルフットマネジメント協会評議員なども務める。著書に『ナースの心がラクになる すぐやるストレス解消術』(学研プラス、2015)がある。趣味は登山、ランニング、温泉。

連載の紹介

働く仲間を楽にする ナースのための人間関係メンテナンス術
ナースを取り巻く職場環境の中で「人間関係」は大きなストレス源であり、メンタルヘルスが悪化する主な原因の1つです。この連載では、「フラットな関係性の中で働きやすい環境をつくるには?」をテーマに、臨床心理士である筆者が、自分だけでなく仲間も楽になり、誰にとっても働きやすい職場となるような人間関係のあり方、そのつくり方、メンテナンス術などについてお伝えしていきます。

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