この連載を書いている今は、ちょうど5月に入ったところです。桜も終わり、目には新緑がまぶしい季節だというのに、このような自粛と緊張の日々はいつまで続くのでしょうか。
1月に神奈川県で国内初の感染者が発生したと報道された時には、まだ対岸の火事といった認識でした。その後、豪華なクルーズ船内や屋形船での集団感染の報道を聞いても「特殊な環境での出来事」といった認識で、まだ自分自身の生活に影響はなく、訪問先でも利用者とテレビを見ながら「怖いですね~」なんて悠長に話していました。
2月に入ってからも研修に参加したり、プライベートでは友人と食事をしたり、旅行に行ったりと平穏に過ごしていました。
3月に入り、現場には次第に緊張感が…
仕事をする中で、少しずつ緊張感が増してきたのは3月に入ってからでした。アルコール消毒液やマスクなどの備品を購入しようとしてもどこでも品切れ状態となり、創部を覆うためのガーゼなども「どこにも売っていないの」と利用者から相談されるようになりました。
消毒用アルコール綿などは、正直、今まではあまり深く考えずに使用していましたが(これはこれでいけませんね!)、1枚ずつはがして大切に使うようになりました。紙マスクも、今は洗って何回か使用しています。
衛生材料の不足に関しては、訪問診療を受けている利用者の場合はクリニックが必要量を置いていってくれるので助かりましたが、大学病院を受診している人などからも「売店にガーゼが売っていない」と相談されることがありました。訪問の合間に薬局やコンビニエンスストアをのぞいてみて、ガーゼやマスクがあれば購入して利用者に買い取っていただくということをしており、これは今も続いています。
テレビや新聞を見ても新型コロナ関連の報道ばかり。休憩時間にも「これからどうなっちゃうのかね~」なんて会話が増えていましたが、具体的にはどうしたらいいのか分かりませんでした。この頃から日本訪問看護財団のウェブサイトで「新型コロナウイルス感染症対策のお知らせ」が随時アップされるようになり、大枠ですが対策の方向性が定まった気がしました。
ステーション内でも「なるべく会話しない」を徹底
4月に入って早々に、利用者やご家族あてに当ステーションとしての「感染症対策のお知らせとお願い」を記したものを書面で配布しました。
その内容は、(1)スタッフが毎朝検温を行っていること、(2)研修や会食など密集場所には参加しないこと、(3)手洗いやマスク、場合によってはガウンなどの防護を徹底させていただくこと──などです。利用者にも、体調管理の徹底と家族も含めた検温、体調不良の際には訪問前に電話をしてほしいことなどをお願いしています。

イラスト:古村耀子
認知症で独居の方や精神疾患の方も多いので、どこまで実施していただけるかは不明ですが、私たちの手洗い頻度は格段に増えました。今までは特に処置がなければアルコールジェル消毒で済ませていたこともありましたが、今は訪問時と退室時にはせっけんでの手洗いを欠かしません。おかげで夏に向かう季節だというのに手がガサガサです。
「密閉」「密集」「密接」を避ける意味でも、ステーション内での勉強会や朝のミーティングはなくなりました。1時間ごとに換気をするように心掛け、出勤も訪問時間に合わせての時差勤務、終了後は直帰して自宅で記録することもOKとなりました。昼食は訪問車の中で食べるか、事務所内でもなるべく会話せず、離れて座ることを徹底していて寂しい限りです。