日経メディカルのロゴ画像

Nikkei Medical ONLINE日経メディカル オンライン https://medical.nikkeibp.co.jp/

2008. 5. 24

脳卒中における虚血耐性現象の意義と降圧療法の位置付け

広島大学大学院 脳神経内科学教授 松本昌泰氏に聞く

2008. 5. 24

脳卒中における虚血耐性現象の意義と降圧療法の位置付け

広島大学大学院 脳神経内科学教授 松本昌泰氏に聞く

関連ジャンル:

脳血管

 また、脳血管障害を発症しやすい老年者高血圧患者を対象とした多くの大規模臨床試験のメタアナリシスによって、収縮期血圧を12〜14mmHg、拡張期血圧を5〜6mmHg下げると脳血管障害の発症を34%減少させることが分かっています。

 2次予防においても、PROGRESS(Perindopril pRotection aGainst REcurrent Stroke Study)のサブ解析の結果から厳格な降圧療法が非常に重要であることが明らかになっています(図2)。

 2次予防に関する大規模臨床試験としては、この他に慢性期を対象としたMOSES試験、急性期を対象としたACCESS試験があり、これらのエビデンスが本邦の高血圧治療ガイドライン(JSH2004)に反映されています。

図2 PROGRESS研究のサブ解析で厳格な降圧の重要性が指摘

 具体的には、急性期(発症1〜2週間以内)に拡張期血圧140mmHg以上が持続している症例、220/120mmHg以上の症例、平均血圧130mmHg以上の症例に対して、脳梗塞では前値の85〜90%、脳出血では前値の80%が降圧目標となっています。また、慢性期(発症1カ月以降)の降圧目標は、1次目標(治療開始2〜3カ月)が150/95mmHg未満、最終目標(治療開始数ヶ月以降)は140/90mmHg未満となっています。

 一方、2009年の刊行が予定されているJSH2009では、比較的軽症の脳梗塞症例に対して、発症後2週間前後から慢性期治療を開始し、1次目標を設けずに140/90mmHg未満を降圧目標として推奨する予定です。一方、脳出血症例に対しては、PROGRESSの成績から120/80mmHg未満が最も再発率が低いことが明らかになっていますので、“the lower the better”が適用され、120/80mmHg未満が降圧目標として推奨される予定です。

 脳卒中発症後の降圧治療において、最も注意すべき点は緩徐な降圧であり、さらに臨床病型に応じて神経症状、特に脳循環不全症状の有無に留意することが大切です。特に、動脈硬化性の強度狭窄が頭蓋内の脳血管や両側の頸動脈にみられる場合は、急激な降圧が脳梗塞の再発原因となりかねません。この点はJSH2009でも強調する予定です。

図3 降圧療法によって回避される脳卒中再発の割合

 また、先に示した3つの大規模臨床試験には脳梗塞、脳出血、脳塞栓が含まれています。一方、今年その成績が発表されるPRoFESS(Prevention Regimen for Effectively Avoiding Second Stroke)は、約2万例の脳梗塞症例のみを対象としていますので、当然、その成績もJSH2009に大きな影響を与えると思われます。

 脳卒中の再発予防では、降圧治療の他に、抗血小板療法、脂質低下療法、抗凝固療法、頸動脈内膜剥離術などの治療がありますが、脳梗塞発症例の約62%が高血圧を合併しているため(J-MUSICの成績から)、降圧療法によって回避される脳卒中再発の割合は16.5%/年と、その治療効果は最も高くなっています(図3)。

 したがって、脳梗塞症例を診ている医師は、まず降圧療法に精通し、同時に抗血小板療法、脂質低下療法、抗凝固療法など、個々の症例に必要な治療を積極的に行なっていくことが重要といえます。

(日経メディカル別冊)

この記事を読んでいる人におすすめ