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2008. 5. 7

脳卒中予防の原則とARBの有用性

国立循環器病センター名誉総長 山口武典氏に聞く

2008. 5. 7

脳卒中予防の原則とARBの有用性

国立循環器病センター名誉総長 山口武典氏に聞く

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脳血管

――一般医家の先生方も利尿薬の使用をためらう必要はないということですか?

 日本で脳卒中医療に携わってきた人間は、私を含め、降圧利尿薬を使うと脱水が起きるから、脳卒中が再発しやすいと主張してきました。

 以前実施した調査で、降圧療法を施した脳出血患者が脳卒中を再発した場合、多くがラクナ梗塞であり、その大部分が降圧利尿薬を使っていました。このため、脳出血の患者に降圧利尿薬を投与するとラクナ梗塞の発症を促すのではないかという印象があり、大部分の脳卒中専門家も同様の感触を持っていました。

 しかし、一過性脳虚血(TIA)の既往を含む脳卒中再発の予防について、ACE阻害薬と降圧利尿薬の併用効果をみたPROGRESS試験では、併用群の方が大きな降圧が得られ、発症リスクも下がっていました。この結果から、利尿薬はいままで日本で恐れられていたような悪いものではないと見直されています。

 十分な降圧が得られないとして紹介されてきた患者さんの中には、Ca拮抗薬からβ遮断薬、ACE阻害薬、ARB、α遮断薬までを併用されている方がいます。このような場合でも利尿薬とARBだけにしたところ、すっと(血圧が)下がった人を数多く経験しています。

 利尿薬を少量併用し、効かなかったら半量から常容量まで増量するというのは非常に良い治療方針だと思います。

――抗血小板療法と降圧療法はどのように進めていくべきですか。

 やはり降圧が先決です。特に再発予防において、脳出血とラクナ梗塞は紙一重で、200〜300μmの血管が破れれば出血、詰まればラクナ梗塞ですから、出血を起こした後に梗塞を起こしてくることがしばしばあります。

 では出血のある人に抗血小板薬を投与するのは危険かというと、必ずしもそうではありません。まず、やや低めの血圧コントロールを試み、それがうまくいったら、あとは抗血小板薬を使うのが大切です。

――PRoFESS試験の結果が近く発表されますね。

 ProFESS試験の結果によって、脳卒中に対する降圧と抗血小板療法の適切な組み合わせが示唆されるでしょう。再発予防においてARBは非常に優れていると思っています。降圧にはARBを使い、抗血小板療法には副作用が少なくて効果が期待できる薬を使うことで、一般の人にインパクトを与える結果が得られると期待しています。

 特に徐放性ジピリダモールとアスピリンの合剤であるAggrenoxは非常に優れたコンセプトの製剤だと思っています。ジピリダモールには抗血小板作用や内皮の保護作用、血管拡張作用があるとされていましたので、かねてから、アスピリンと併用するのは合理的だと思っていました。結局、これが製品化されてAggrenoxになったわけですから、日本でもあってしかるべき薬剤だと思います。

――脳卒中協会の理事長として、予防と一刻も早い受診の重要性を訴えておられます。

 日本脳卒中協会では、毎年5月25〜31日を脳卒中週間と定めて全国で市民公開講座を開催し、併せてマスコミ向けのプレスセミナーを行って予防の大切さを訴えています。高齢になれば誰でも用心しますが、働き盛りの方には繰り返し働きかけないと浸透しません。

 一方、脳卒中急性期にt-PAが適用されるようになり、治療成績の著しい向上が可能になりましたが、この治療は発症3時間以内に開始しないと効果が得られにくく、逆に出血の危険が伴います。脳梗塞の初期症状やt-PAの危険性についても、一般の方やマスコミにある程度知っていただき、一刻も早い受診を呼びかけることが重要だと考えています。

(日経メディカル別冊)

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