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2008. 7. 2

心原性脳塞栓の病態解説と診療の最新事情

2008. 7. 2

心原性脳塞栓の病態解説と診療の最新事情

関連ジャンル:

脳血管

急性期と慢性期の治療
 急性期の心原性脳塞栓症治療は、抗凝固薬の投与が基本となるが、広範な梗塞、高齢、高血圧例では出血性梗塞の危険性が高いため、投与を待機する。

 発症3時間以内では、t-PAの静脈内投与が適応となるが、他の脳梗塞の超急性期治療と同様、厳しい適応条件が設けられている。発症6時間以内の中大脳動脈閉塞に対してはプロウロキナーゼの動脈内投与の有効性が示されているが(保険非適用)、出血性脳卒中の合併を来す可能性が有意に高くなるため、適応例の慎重な選択が要求される。

 発症6時間以降の症例に対しては、脳保護薬エダラボンの点滴投与が有効とされているが、まだ十分に検証されていない。

 発症48時間以内の症例に対しては抗血小板薬アスピリンの有用性が示されているが、心房細動を合併する症例では無効との報告もある。左心房内などの血栓は凝固系の関与が大きいため、ヘパリンの適応が考えられるが、出血を増大させる恐れがあるため、慎重投与が求められる。大規模研究報告で、ヘパリンは急性期脳梗塞の再発を有意に減少させるものの、出血性脳卒中を増加させるため、有用性が相殺されるとされている。

 脳卒中治療ガイドライン2004では、心原性脳塞栓症の再発予防は、抗凝固薬ワルファリンが第一選択薬とされ、ワルファリン禁忌患者のみアスピリンなどの抗血小板薬の投与が推奨されている。これは、ワルファリン(INR2.5-4.0)により再発が有意に低減され(EAFT Study, 1993)、アスピリンでも再発を低減するものの、有意ではないとするエビデンスによる。

 脳卒中リスクの高い心房細動患者における血管イベント抑制効果において、経口抗凝固薬はクロピドグレル+アスピリン併用に優り、抑制効果は既に抗凝固薬を投与されていた症例で特に顕著であったことが示されている(ACTIVE W試験、2006)。

 日本循環器学会ガイドラインでも、同様に脳塞栓のリスクの高い心房細動患者に対しては、禁忌でない限り積極的なワルファリン療法を推奨しているが、対象患者の年齢、病態、危険因子に対応したより細かいINR(国際標準化比)の調整を設定している。

 また、慢性と発作性心房細動の比較において、塞栓症の発症頻度に差はみられないことから、発作性心房細動に対しても同様に抗凝固療法を行うべきとされている。AFFIRM Study(2002年)の結果から、抗不整脈薬で洞調律が維持されているケースでも、脳塞栓予防のために抗凝固療法は継続すべきであると言われている。

最後に、最近の話題として、米国食品医薬品局(FDA)が、経口抗凝固薬療法に用いられるワルファリン投与において、遺伝子の影響を用量に反映させるべく、遺伝子多型による用量設定を唱えている。

 新薬開発の動きもある。心房細動患者を対象とした、新規経口直接トロンビン阻害薬による脳卒中、および全身性塞栓症の発症予防についての大規模臨床試験「RE-LYTM試験」が進行中で、2009年初頭には結果が得られる予定になっている。

(頓宮 潤=メディカルライター)

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