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2008. 7. 2

心原性脳塞栓の病態解説と診療の最新事情

2008. 7. 2

心原性脳塞栓の病態解説と診療の最新事情

関連ジャンル:

脳血管

 心原性脳塞栓は、心臓内で形成された血栓心房細動(AF)などにより剥離し、脳の動脈に流入して閉塞するタイプの脳梗塞。正常な心臓内では血液凝固による血栓形成は認められないが、心疾患によって脈の乱れや心機能の悪化、心臓内膜の傷害などが起こることで血栓が形成されやすくなる。

 血栓が形成されやすい心疾患としては、リウマチ性心臓弁膜症非弁膜性心房細動(NVAF)急性心筋梗塞拡張型心筋症、卵円孔開存などがある。最近では高齢者の増加に伴い、NVAFが原因となる心原性脳塞栓が増加傾向にある。心房細動のある人は正常な人に比べて脳梗塞を来す確率が5倍程度高い。また、頸動脈など他の部位から血塊(clot)が流入して塞栓するケースもある。心原性脳塞栓は脳卒中の15-20%、虚血性脳血管障害の約3割を占めるとされる。

 心原性脳塞栓では、それまで全く正常に流れていた脳動脈が突然閉塞し、血液の流れが途絶えてしまうため、側副血行路ができる余裕がない。閉塞した脳動脈から血液を供給されていた部位の血液循環が極端に低下するため、梗塞に陥った領域が大きく、脳の表面にまで及ぶことが少なくない。

 突然、強い麻痺感覚障害が起こり、失語症半側空間無視といった大脳皮質の損傷による症状が出現する。意識障害もほかの梗塞の種類に比べて強いことが多い。突然発症する最も危険な脳梗塞であり、意識不明や死亡に至るケースもある。

 心臓から流出し、脳動脈の狭い部分に引っかかった血栓に対しては、体内の線溶系の働きが活発となる。血栓の大部分は数時間から数日のうちに溶解して縮小し先端に移動するか、完全に溶解してしまい、血流が再開通する。脳梗塞形成前に再開通が得られると症状は劇的に改善するが、脳梗塞形成後の再開通では、血管ももろくなっているために出血性梗塞を起こしやすくなる。

心原性脳塞栓症の診断と検査
 急性局所性脳症候群を呈した症例の中で、頭部CT、 MRIにより脳梗塞を認め、心内塞栓源が発見された症例、または頭蓋外動脈や頭蓋内主幹動脈の大血管病変がなく、血管疾患などの他の原因が否定される場合には心原性脳塞栓症とみなされる。最近、MRIの超高速撮像法であるEPI(echo-planar imaging)法を応用した拡散強調画像(DWI)によりcytotoxic edema(脳細胞浮腫)を検出し、超急性期の診断が可能となった。

 心原性脳塞栓においては、MRIのDWIと灌流画像(PI)を組み合わせて評価したDWI/PIミスマッチはペナンブラ領域(部分的に描出された部位)を示しているとされ、中大脳動脈塞栓に対する血栓溶解療法の適応を決定する際の最も重要な条件となっている。

 心原性脳塞栓の再発を予防するためには、塞栓源となる心臓の好発部位、特に左心耳のチェックが重要となる。経食道心エコー(TEE)により、従来、胸壁エコーでは観察が困難だった左心耳血栓が診断できるようになった。脳卒中の発症と密接な関連をもつ頸動脈の病変に関しては、頸動脈超音波検査による動脈硬化評価法が用いられる。

(次ページに続く)

(頓宮 潤=メディカルライター)

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