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安全で苦痛の少ない経鼻内視鏡検査を行うには、前処置が非常に重要となる。丁寧に確実な前処置を行って、安全な挿入経路を確保できれば、受診者の苦痛はほとんどないといわれている。そこで、国家公務員共済組合三宿病院(東京都目黒区)内視鏡室の岩永智恵子氏(看護師/内視鏡技師)に、具体的な前処置法を聞いた。
この前処置方法のポイント
当院がネラトン法を採用しているのは
前処置の方法としては、ネラトン法のほかに、スプレーのみの処置や、綿棒を挿入する方法などがあります。私たちがネラトン法で前処置を行うのは、内視鏡が通過するスペースがあるかどうかを確認する目的があります。また、被検者の方に鼻に管を通すという処置を体験していただき、慣れてもらう意味合いもあります。
14Frネラトンカテーテル1本で行う理由は
経鼻内視鏡を開始した当初は、14Frの後に16Frのネラトンカテーテル(または経鼻内視鏡前処置用スティックを使う。以下、スティック)を挿入していました。しかし、16Frのスティックを挿入すると被検者の痛みが強く、前処置を実施する看護師として抵抗があったことと、16Frのスティックが入ったからといって、必ずしも18Frサイズのスコープが入るとは限らないこと、前処置の手間が増えること、などの理由から、試行錯誤の末、現在の方法に落ち着きました。
現在は、14Frのスティックにプリビナ(硝酸ナファゾリン:血管収縮薬)を噴霧して挿入することで、鼻腔を十分に拡張でき、挿入率も96.8%と安定しています。
この方法を実施して、被検者の反応は
2007年に、聞き取り調査による前処置の評価を行いました。その結果、全体を通して全く苦痛がなかったという方は4割弱の36.9%でした。何らかの苦痛ありとした方で多かったのは、ビスカスがしみる47.9%、ネラトン挿入時に痛み・違和感がある50%でした。
もっとも、検査後のアンケートを見ると、前処置の苦痛は軽度のもので、次回も経鼻内視鏡を希望するという方が85.0%にのぼりました。
当科では、この調査結果を基に2008年から前処置を改良しました。処置の手順は次のとおりです。
(1)プリビナの噴霧からスティックの挿入まで5分間空ける。
(2)スティックは浅め(5cm)に挿入する。
(3)ビスカスの注入はスティックを通す。
(4)検査開始時間はプリビナ噴霧から15分経過してからにする。この新たな前処置法では、ビスカスがしみるという訴えはわずか8.9%に、またスティック挿入時の痛みや違和感も10.8%にと、ほぼ5分の1に減少しました。今後も患者さんのため、少しでも苦痛の少ない前処置を目指したいと思っています
前処置の流れ
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1.両方の鼻腔に硝酸ナファゾリンを噴霧
0.05%硝酸ナファゾリン(プリビナ)を1〜2回噴霧する。 -
2.ガスコン水100mLに重曹1g・ガスチーム1包を加えて服用
ガスコン水はガスコンドロップ40mLを水1000mLに溶かしたもの。 -
3.検査台にてローリング
腹仰位で10〜30数えた後、仰臥位。 -
4.鼻の通りの良い方を確認する。
受診者に一方の鼻翼を指で押さえてふさいでもらい、他方の鼻腔から息を吐いて、通りが良い方を確認する。
受診者が、どちらも良く通るといった場合は、右の鼻腔を選択する。 -
5.通りが良い方の鼻腔にネラトンを挿入
14Frのスティックに0.05%硝酸ナファゾリン(プリビナ)を噴霧後、キシロカインビスカス(塩酸リドカイン)を少量塗布後、通りが良い方の鼻腔に5cmと浅めに挿入する。スティックは約5度上方に向け、回転させながら挿入(深く挿入すると痛みを誘発する、またスコープ通過時には鼻腔から約5cmの位置で痛みが強くなる傾向があり、ここに麻酔を効かせるため)。スティックが挿入できない場合は、もう一方の鼻腔に挿入を試みる。 -
6.スティックを介してキシロカインビスカスを注入する
キシロカインビスカスを直接鼻腔に注入すると、しみる感じが強いため。 7.プリビナ噴霧から15分経過してから検査開始
(日経メディカル開発)
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