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New Aspect 経鼻内視鏡検査は見落としが多いとはいえない(上)

日経メディカル2008年12月号に掲載した『経鼻内視鏡に死角あり』の記事に対して、「この記事によって、経鼻内視鏡検査には見落としが多いという誤解が医療現場で広まった」とのご指摘を内視鏡専門医の方などから頂いた。誤解を招きかねない記事であったことをお詫びするとともに、経鼻内視鏡検査の特徴とメリットについて、大阪赤十字病院の圓尾隆典氏に改めて解説してもらった(日経メディカル編集部) (日経メディカル2009年3月号から)

2008年の日経メディカル12月号に、「経鼻内視鏡に死角あり」(24〜25ページ)というタイトルの記事が掲載された。同記事では、経鼻内視鏡による2例の癌見落とし例が紹介されている。記事を読むと、「経鼻内視鏡だから見落とした」という印象を受けるが、根拠不十分である。

本稿では誌面の都合で逐一反証はしないが、この記事が世の中に与えた影響は計り知れない。事実、筆者らも、「経鼻内視鏡検査の紹介を差し控えることにした」という開業医の方々の声や、「経鼻内視鏡は受けない方がよいらしい」という一般の人々の声を耳にするようになった。

何より、タイトルに「死角」という言葉を使ったことで、内視鏡専門医以外の医師や一般の人々に、「経鼻内視鏡を使うと癌を見落とす」という誤った印象を与えてしまった。
記事内容も、経鼻内視鏡の操作性や解像度の課題と、経鼻内視鏡における癌の見落としの間に関連性があるかのように書かれており、タイトルが与えた悪い印象をさらに強めている。

経鼻内視鏡で救われるはずの人々が、この記事のために検査を敬遠するようになっては、取り返しがつかない。誤解を解いて経鼻内視鏡に対する信頼を取り戻すため、本稿を執筆することにした。

機器の特性に応じた工夫を

経鼻内視鏡は楽で安全性も高く、癌検診の裾野を広げたとして高い評価を得ている。一方で細径化に伴い若干の機能制限は避けられなかった。「通常径の経口内視鏡(以下、通常内視鏡)を使い慣れていると非常に使いにくく感じられる」(12月号の記事での医師のコメント)との見方もある。しかし、経鼻内視鏡も慣れれば使いにくいとは感じない。

経鼻内視鏡には通常内視鏡とは異なる特性がある。それを欠点と呼ぶのは適切ではない。通常内視鏡は遠景気味で、広く見渡すような観察に適しているし、経鼻内視鏡は近接で比較的狭い範囲を見ることに長けている。近接時の解像度は通常内視鏡に勝るとも劣らないとの報告もあり、明るさの低下も補える。

通常内視鏡と同じ感覚で経鼻内視鏡検査を行うと、若干違和感を覚えるかもしれない。経鼻内視鏡の特性に合った観察法を工夫する必要がある(症例参照)。

胃癌発見率は遜色ない

経鼻内視鏡による胃癌発見率は、通常内視鏡と遜色ないとする報告は複数ある(表1)が、発見率が劣るとの報告はほとんどない。さらに経鼻内視鏡では早期胃癌の発見率が増える可能性も指摘されている。

一方、報告数は少ないものの見落とし率は通常内視鏡と変わらない。見落とし率については検診施設からの報告が出揃ってから検討すべきである。現状では通常内視鏡より早期胃癌の発見率が劣るとは言えない。

早期癌発見は困難ではない

癌の診断には、癌の発見(存在診断)と癌の詳細な分析(質的診断)という2つの側面がある。経鼻内視鏡は存在診断だけでなく、通常の質的診断にも威力を発揮する。ただし、特殊光による拡大観察といった高精細な質的診断を求めるのは適切ではない。

注意深く観察をすれば、経鼻内視鏡で早期癌を発見することは困難ではない。筆者の施設には、経鼻内視鏡で診断された早期胃癌症例が日常的に紹介されている。その多くで内視鏡的切除が行われている。

苦痛少なく検査に専念できる

早期癌の診断に必要なのは、(1)医師の診断能力(2)内視鏡の機能(3)検査環境(4)検査の受容性─の4つ。内視鏡の機能面ばかりが取り上げられがちだが、ほかの3つも劣らず重要である。

このうち検査環境は、医師が癌の診断に専念できるか否かを左右する。通常内視鏡で嘔吐反射が強い場合には、検査に専念できないために癌の診断を妨げる可能性がある。その点、経鼻内視鏡は、嘔吐反射の誘発が極めて少なく、じっくり観察しても苦痛が少ないことが報告されている。結果的に癌の診断に貢献すると期待される。

通常内視鏡での癌の見落としについて検討した報告によれば、見落とし率は決して低いものとはいえない。そのため、毎年検診の重要性が指摘されている。

内視鏡検査を繰り返し受けてもらうためには、検査に対する受容性の高さが要求される。苦痛が少ない経鼻内視鏡検査に対しては、繰り返し受けてもよいとする声が多いことが報告されている(図1)。その意味でも、癌の発見に大きく寄与することが期待される。

【次号に続く】