福井大学医学部附属病院(福井県永平寺町):クラウド環境で病院情報システム構築

ユビキタス実現を目指しクラウドによるインフラの最適化を模索

35台の仮想サーバーと約1000台のクライアント端末の仮想デスクトップを12枚のブレードサーバーに集約(冗長化により24ブレード構成)

 また、病棟看護師による実施空間にもIT導入。オーダーに基づいた注射薬の準備やリアルタイムの実施チェックの仕組みも、10年ほど前から利用している。こうした医療現場のIT化の流れによって、さまざまなシステム上の課題が生じてきた。

 「アプリケーションごと、サブシステムごとにサーバーを立ててきたため、数多くの物理サーバーが運用されるようになりました。また、信号データや動画像データなど多くのデータが大量に蓄積されるようになり、システム自体も肥大化し、運用管理を含めたコスト負担が非常に大きくなっています。」

 「一方、院内のあらゆる場所からデータへのアクセスを可能にするため、電子カルテや各部門システムなどカスタマイズされたクライアント端末が大量に導入され、その導入・運用コストが大きな問題になりつつあります。反面、ネットワークなどのインフラ整備は"おまけ"のような扱いで、システム全体がアンバランスになっているのが現実です」。山下氏は、従来の課題をこう指摘する。

システム構成の概要図

 
 そうした課題の解決方法の1つとして、病院情報システムのクラウド化を検討した、と山下氏は述べる。クラウド化の目的として、複合システムの増大に対応、運用の変化に柔軟に対応できるシステム構築、システムの投資コストの最適化、運用管理コストの削減、低炭素への対応、という5つを挙げている。

ブレードサーバーでは仮想化対応の高価なスイッチモジュールを使用するが、病院情報システムは仮想サーバーやブレード自体を動的に変更しないので通常のネットワークスイッチを利用しコストダウンを達成した

 福井大学病院では、クラウド環境を構築するためにハードウエアの仮想化とアプリケーションの仮想化技術を採用し、すべてのサーバーをブレードサーバーに集約すると同時に、仮想デスクトップ技術でクライアント端末をシンクライアント化した。それまで35台あった電子カルテシステム、部門システムの物理サーバーは、3枚のブレードに統合された。加えて、約1000台のクライアント端末の仮想デスクトップ環境を、9枚のブレードをベースに運用している。

 従来のようにシステムごと、アプリケーションごとに物理サーバーを立てるシステム環境の場合、稼動のピークを想定して余裕を持った仕様にするのが一般的だ。そのため、それぞれにハードウエアリソースのムダが生じる。「サーバーの仮想化によるクラウド環境では、メモリーの容量を必要なときに必要なアプリケーションに柔軟に移動できるため、リソースのムダなく利用できるようになり、ハードウエアコスト削減に寄与します。部門システムによっては、新しいバージョンのOSに対応していないものもありますが、異なるバージョンのOSを仮想サーバーで運用できるので、効率的なマシンの使い方ができます」(山下氏)という。

 また、物理サーバーは1筐体12ブレード構成、2筐体で冗長化している。筐体をまたがるフェイルオーバーが容易にでき、異常を検知した仮想サーバーを速やかに別の仮想サーバーに移行できるため、可用性の高いシステムが容易に構成できる。「従来は、クリティカルなシステムのみを高価なクラスタ製品で冗長化するのが限度でした。仮想化では、低コストで高可用性を確保できるようになりました。これも大きなメリットです」(山下氏)と指摘する。

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